2004年08月21日
アグリゲーションサービスで金融機関の差別化の要素は
証券会社が決済機能を持つという話はずいぶん以前からありました。以前はずいぶん期待していたのですが、いまだに実現されていません。木村剛氏のエントリ「証券会社が銀行になる日?」は、インターネットサービスによる新しい枠組みで銀行と証券の機能を融合するという話を紹介しています。
木村氏は、アグリゲーションサービスのもっとも基本的な機能を最初に紹介しています。以下、木村氏のブログから引用。
アカウントアグリゲーションというサービスを利用すれば、複数の金融機関の口座情報などをインターネット上で一覧表示することが可能となる。
この単純なアグリゲーションサービスは、Yahooなどが無償サービスとして提供しています。僕も複数の銀行や証券会社とお付き合いしていますが、自分のパソコンで表計算ソフトなどを多少工夫して使えば同じようなことをしているので、この程度の機能だけならあまり利用したいとは思えません。このレベルではアグリゲーションサービスはそれほど大きな付加価値を提供しているわけではありませんね。
このサービスが付加価値を持ち始めるのは、顧客の全資産を把握できているがゆえに、適切な運用アドバイスや商品の提案ができるところです。
アカウントアグリゲーション・サービスが先行しているアメリカでは、金融機関が顧客の同意を得て、他の金融機関との取引状況を確認し、その金融機関よりも有利な金利を提示することもあるという。
もしこうしたことをしてもらえるなら、非常に魅力的ですのでぜひ使ってみたいですね。しかもアドバイスだけでなく、資金の移動や買い付けと言った運用そのものもしてもらえますし、さらに、決済機能まで提供してくれる可能性があるということです。
ASPをプログラミングしておき、証券会社の預り金からどこかの銀行口座に送金したいときは、預り金から最終送金先を明示した上で、送金金額を当該預り金からある特定の銀行口座に送金し、その銀行口座から最終送金先に送金する流れをプログラミングしておけばよい。
アグリゲーションサービスと言えば、前述の情報の集約機能ぐらいの認識でしたので、それ以上の付加価値の可能性を知って大いに期待したくなりました。そこでこうしたサービスが広がるとすれば、2つの意味で銀行や証言会社の選別になるのではないか、と思います。
1つは、アグリゲーションサービスがうまく機能するとすれば、顧客は複数の金融機関のあいだでシームレスにお金を移動させたいと思うでしょうから、振り込みや引き出し手数料を設けている銀行は、そもそもこのサービスの枠組みに乗れないのではないか、ということです。手数料の無料化は、シティバンクや新生銀行をはじめとして多くの銀行がその流れに向かっていますが、その流れをさらに加速していくのではないでしょうか(証券会社の多くは、すでに振り込み手数料を負担してくれていると思います)。
手数料無料化のプレッシャーは銀行にだけでなく、株式や投資信託の販売手数料の値下げ競争にもつながってくれるとうれしいですね。とすれば、ラップ口座のような形式になっていくかもしれません。
もう1つは、木村氏はタイトルを「証券が銀行になる日?」としていますが、このサービスにもっとも近いのは大手銀行なのではないでしょうか。銀行はすでに決済機能を持っている上に、大手銀行ならMMFもMRFも投資信託も扱っています。多くの個人資産運用はこの範囲でサポートできると僕は思いますので、あとは他行とのアグリゲーション機能さえ導入すればいいわけです。
とすれば、個人をターゲットに生き残りをかける大手銀行の差別化は、手数料無料化とネット機能のアグリゲーションサービス、そして顧客へのアドバイスの質ということになるのでしょうか。
今回のエントリは珍しく長文になってしまいました。あの木村剛氏のコラムに、大胆不敵にもトラックバックさせていただいて、ちょっと肩に力が入ってしまったからでしょうね。
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