2005年03月 4日
長期保有に投げかけられた疑問
株式も投資信託も、投資で成功するための基本は「長期保有」だとよくいわれます。しかし、「時間分散」投資について調べていたら、長期保有の効果について疑問がなげかけられているようなのです。
僕の理解では、長期保有の効果とは「ちゃんと銘柄分散された投資信託をずっと保有していれば、途中では大きく値上がりしたり、値下がりしたりするかもしれないけど、いずれはリスクに応じたリターンに落ち着いていく(株式だと10%程度らしい)」というものです、よね。
ところが、その考え方は間違いだ、という論文が出たらしいのです。
日本総研の論文「再考:年金資産の運用規制緩和-投資リスクの時間分散効果論争からの視点」(1996年10月)から。
近年、ボストン大学のボディ教授が、オプション評価理論を用いて、「時間分散効果誤謬説」の正当性を改めて確認することに成功し、これが契機となって研究者・実務家間で再び「時間分散効果論争」が巻き起こされている。
ここでの「時間分散効果」とは、これまでこのブログで調べてきた「長期保有」を意味するほうではないかと文脈から理解しています。
続いて、ニッセイ基礎研究所 年金ストラテジー「長期投資の時間分散効果は本当か」(1996年6月)から。
長期投資の場合には、時間分散効果が期待できるので、ハイリスク資産への投資が望ましい、との主張もある。しかしその一方で、時間分散効果について否定的な見解があるのも事実だ。サミュエルソン、ブラック、ペロルド、ボディなどアメリカの金融経済学の著名な学者の間でも、この問題は古くから論争があり、まだ決着がついていないようである。
さらに、東京国際大学 商学部教授 渡辺信一ゼミナールのホームページに掲載されている「金融工学の基礎」の「第1章 銘柄分散と時間分散」から。ちょっと長めに引用します。
ところが、どうも、「時間分散効果」は、「銘柄分散効果」ほど、根拠が明白とは言えない というのが、現在のところ、ファイナンス界の結論なのだ。まず、簡単に言うと、時間の経過とともに、資産のリターンは、過去の平均値に近づく。仮に市場が効率的であれば、リスクとリターンはトレード・オフであるから、高リスクの資産は、高いリターンをもたらすことになる。一種の大数の法則が働くから、資産のリターンは平準化される。仮にリスクを、資産全体のリターンの散らばりと定義すれば、リスクは確実に減少する。一方で、時間の経過と共に、個別のポートフォリオは、分散が大きくなるから、この意味で、リスク大きくなる。仮にリスクを、個々のポートフォリオのリターンのばらつきと定義すれば、リスクは大きくなる。
このように、時間の経過と共に、リスクが大きくなるのか、小さくなるのかについて、議論が分かれていた。この問題に対して、アメリカのファイナンス学者のボディは、1995年に論文を発表し、ポートフォリオが、無危険利子率(コール・レートを想像すれば良い)で成長するものと仮定して、この水準以下になったら、不足金額を補填するような契約(一種のプット・オプション)の保険料(オプション価格)をブラック=ショールズの理論式に基づいて算出し、それが、時間の増加関数かどうかで、論争に終止符を打とうとした。ブラック=ショールズの理論式に基づいて算出する限り、このオプション料は、時間とともに発散するから、時間分散効果はないというのが、彼の結論であった。
(太字はいずれも、僕が指定しました)
インターネットで調べて、ここで引用した範囲では、この議論はまだ決着がつかないままのようです。この議論の詳細は専門的で残念ながら僕にはよく分かりません。ただ、一般に正しいと思って解説されているものの中にも、本当のところは専門家のあいだで議論が分かれていて、よく分かっていないものがあるのだなあ、と改めて思います。
日付を見て分かるように、この議論は10年くらい前にあったようなのです。もしもその後の進展が分かる方がいたら、ぜひ教えてください。
で、実は長期保有してもリスクを減らす効果はあんまりないのだ、ということにもしなったら、ちょっとショックですよね?
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ショックですね。僕もインデックス型のファンドを積み立てているので。
この結果はインフレも考慮しているのかな?
反応ありがとうございます。リンク先を読んで僕なりに理解した範囲では、インフレについては考慮してなかったみたいですね。だれか最新情報を分かりやすく説明してくれないですかね。
はじめましてこんばんは!
香港資産運用奮闘記のkz@銅鑼湾と申します。
私もここ最近は株よりもファンドに面白さを
感じてまして、(^ー^;
ファンドに関していろいろ調べてる最中に、
こちらにたどり着きました。
株式投資のサイトは星の数ほどありますが、
ファンド中心に扱ってるサイトは少ないですね。
またお勉強しに来ますので、
今後ともよろしくお願いします。m(_ _)m
kz@銅鑼湾さん、こんばんは。株もいいですが、僕としてはファンドのほうがなんとなく親しみやすくていいんですよね。長期投資に向いていますし。こちらこそよろしくおねがいします。
世界最高の投資家、ウォーレン・バフェットはバイアンドホールド戦略を行っています。
彼は長期間陳腐化しないビジネスに投資をしています。
現代投資理論では必ずしもビジネスの良さに着眼しているわけではありません。
また現代投資理論は世界一の経済大国アメリカで誕生しました。一時的な経済の停滞があったものの一貫して右肩上がりの成長を遂げてきました。
現代投資理論がかつての英国のように経済が衰退している国で誕生していたなら長期投資が有効とはならなかったでしょう。
理論と実践のどちらが正しいか・・・判断は難しいです。
だからこそ投資は楽しいのです。
>現代投資理論がかつての英国のように経済が
>衰退している国で誕生していたなら長期投
>資が有効とはならなかったでしょう。
これは非常に興味深い見解ですね。いずれにせよ、投資は楽しい、というのは同意見です。いろいろ楽しみましょう。
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