2006年05月17日
日本のアクティブファンドを買うなら中小型株式市場向け
スタンダード&プアーズがアクティブファンドとインデックスの比較をしたレポートを発表しました。果たして、インデックスとアクティブファンドはどちらが有利なのでしょう?
このレポートは、スタンダード&プアーズが設定する日本の株式市場の指数(インデックス)であるS&P株価指数とアクティブ運用ファンドを分析したレポート「SPIVA Japan」です。
まず、結論を先に読んでみます。
スタンダード&プアーズの投資サービス部門の外川秀樹は、「今回初めて行われたSPIVA Japanの結果を一望すると、パフォーマンスを比較する期間が延びるほどインデックスを上回るアクティブ・ファンドの比率が低下するという結果がおおむね確認されており、アクティブ・ファンドの多くが長期的には市場平均を上回ることが困難であるという事実が日本でもほぼ証明されたと言える。
アクティブファンドは運用コストが高いため、長期的には運用コストの安いインデックスファンドに勝つことは難しい、とはよく言われることです。例えば、投資至難の定番本チャールズ・エリス著「敗者のゲーム」でも、アクティブファンドではなくインデックスファンドを買うべし、と勧めています。そのことは日本でも通用する、ということのようです。
ただし、もう少し詳しくデータを見てみると、実は違う側面も見えてきます。
1. 国内株式・一般型(東証一部型)アクティブ・ファンドそれぞれの期間中に販売されていた国内株式・一般型(東証一部型)のアクティブ・ファンドの運用成績をS&P Japan 500と比較した結果、同指数を上回ることのできたファンドの比率(%)は以下の通り。
比較株価指数 直近6ヶ月 直近1年 直近3年 直近5年 S&P Japan 500 50.73 47.95 32.56 29.61
興味深いのは、上記の東証一部ではアクティブファンドがインデックスを上回る率が時間の経過とともに順調に下がっているのに対して、下記の中小型株式では、アクティブファンドがインデックスを上回る率がそれよりずっと高く、5年を経過した時点で半数以上だということ。ただし、直近3年のところだけは27%と大多数のアクティブファンドがインデックスに負けています。
3. 国内株式・中小型株型アクティブ・ファンドそれぞれの期間中に販売されていた国内株式・中小型株型アクティブ・ファンドの運用成績をS&P Japan SmallCap 250と比較した結果、同指数を上回ることのできたファンドの比率(%)は以下の通り。
比較株価指数 直近6ヶ月 直近1年 直近3年 直近5年 S&P Japan
SmallCap 25090.91 73.08 27.78 50.67
東証一部の株式を対象にした投資信託で3年以上運用するつもりならば、アクティブファンドがインデックスに勝つ見込みは約3割。インデックスファンドを選ぶ方が合理的なようです。
日本株のアクティブファンドは信託報酬が3%なんてのがざらにありますから、そのことがこれだけアクティブファンドは長期投資に向かないということを示しているのだと想像します。
一方で、中小型の株式を対象にした投資信託の場合は、この5年を見ればアクティブファンドがインデックスに勝つ確率は5割を上回っています。これは玉石混淆の中小型市場では、まだまだファンドマネージャによる目利きが有効だといえるからかもしれませんね。中小型株式の投資信託では、インデックスファンドにこだわる必要はない。このレポートだけを判断材料にすれば、そういってもいいでしょう。
比較対象となったスタンダード&プアーズのインデックスについての説明を補足しておきます。
S&P Japan 500についてS&P Japan 500とは、東証一・二部及びジャスダック市場に上場されている約2,800銘柄から市場代表性及び流動性等の観点から選ばれた500銘柄を対象とする浮動株修正時価総額加重平均である。S&P Japan 500は、それぞれ大・中・小型株を対象とするS&P/TOPIX150、S&P Japan MidCap 100、S&P Japan SmallCap 250というサブ・インデックスを統合した株価指数である。現在、企業年金による国内株パッシブ運用での利用が進んでいる。
あえて付け加えるなら、この発表は同社のインデックスを普及させるためのものかもしれない、ということを念頭に置いておくことですね。それでも、とても興味深いレポートでした。
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