2006年12月13日
山崎元氏だってきっと投資信託を買うんじゃないかな
「投資信託は手数料の無駄だから買うべきじゃない」という主張は、経済評論家である山崎元氏がいつも言われていることなのですが……
ところが、山崎氏だって経済以外の分野ではその“無駄な”手数料を払ってしまうことがあると白状されているんです。少し前なのですが、週刊ダイヤモンドの2006年7月8日号、山崎氏は連載コラム「マネー経済の歩き方」で、こんなことを書いています。
パソコンそのものと秋葉原のショップについてもっとよく知っていれば、同一の性能でたぶん二~三割は安い買い物が出来て、かつ用が足りるだろう。しかし、いろいろなことを調べる時間と手間、それにわかっているもののほうが安心だという要素を考えると、筆者にとっては量販店での買い物が合理的なのだと感じている。
山崎氏だってご自分の専門外の分野では、ちゃんと手数料を払って手間と時間を節約することを正当化しています。それにはご自身も気が付いていて、続けてこう書いています。
だが自己反省してみるに、私のパソコン購入行動は、金融商品に関して「売り手に余計なマージンを払うな」と日頃行っていることが実行できていない。これでは「個別の銘柄は調べる時間がない」「ネットより店頭で買うのが安心だ」などと言って、手数料の高い投資信託を窓口で買う投資家と変わらないではないか。
そうなんですよ。僕は経済は素人ですがパソコンと秋葉原には詳しいですから、量販店でLet's Noteを購入された山崎氏にはこのようにアドバイスします。「ノートパソコンなら、ニッシンパルでThinkPadを買ったほうがずっと安いし、機種の評判もよいだろう。せめて、まず秋葉原を一通り歩いて店頭で価格をチェックするべきだ、1~2時間で済む。量販店でLet's Noteを買うなんて、機種も秋葉原も(≒銘柄も市場も)よく知らないがゆえに余計なマージンを払っている」。なんてね。
もしも山崎氏が、その合理的精神はそのままで、経済評論家ではなく別の分野の評論家だったら、量販店でLet's Noteを買うように、証券会社で投資信託を買うことだってあるかもしれません。
というのは半分冗談としても、過去に僕が「投資信託は生活を楽しむための道具」と書いたように、資産運用にかかる手間と時間を節約するために、多少のコストを受け入れるというのは、それほど非合理的でも、過分なコストを払っているわけでもないと考えています。
とはいえ、僕だって当然ながらできれば余計なコストは払いたくない。だから投資信託という資産運用の“量販店”のなかでも、できるだけよいところを探したい、のです。
もちろん、山崎氏には専門家の立場から「投資信託の手数料は高すぎる」といった主張はぜひ続けていただきたい。これまでの発言も、とても参考になっています。それに、僕も、投資信託は手数料が高い、という論にはまったくの賛成なのです。
でも、投資信託を「買うべきではない」という主張より、できれば「いくら以上なら高い」「高い手数料を請求する金融機関○○や商品××はぼったくりだ」という、“量販店”投資信託のなかでどれを選ぶか、についての鋭いツッコミをしていただけるとありがたい。難しいことは承知のうえですけれど。
以前からこのブログでは山崎氏の言動に注目していて、過去にいろんなエントリを書いてきました。僕は山崎元ファンだと言ってもいいです。最後はそれらを紹介して、このエントリを山崎氏に捧げたいと思います。ちゃんと山崎氏のブログにトラックバックもしますよ。
[関連エントリ]
・ 「投資信託は顧客に不利」と山崎元氏は言う
・ 「お金をふやす本当の常識」は新鮮な再発見がたくさん
・ 良心的な投資信託が登場しない本当の理由
・ インデックスファンドの受益者が損をする可能性
[関連カテゴリ]
・ 1.よもやま投資信託
[広告]
≫次 : やっぱりクレジットは金銭感覚をマヒさせる……
≪前 : 5兆円の投資信託「グロソブ」運用会社の言い分
水瀬 ケンイチ (2006/12/16 22:22:51)
僕も山崎元ファンですが、思いっきり同感です。
日本の投資環境が不十分なのは分かりますが、だからといって、イチかゼロかは極端ですよね。
あるものの中で、よりベターな選択を出来る柔軟さがほしいです。
ファンドの海管理人 (2006/12/17 23:54:58)
同じ考えを持つ人がいて嬉しいです。山崎氏にこのメッセージが届くといいんですが。トラバしたんだけど、反映されてないんですよね。
山崎元 (2006/12/18 16:15:15)
トラックバック、ありがとうございます。
トラバが反映されていなかったのは、自動的に付くと思われる「エロ・トラックバック」の山に埋もれて<保留>になっていたからでした。スミマセン。発見しましたので、<公開>します。
投信の手数料問題は「週刊ダイヤモンド」が「投信の罠」特集(バカ売れしたようです)で、最近、やってくれました。私は、直接書いていませんが、概ね賛成できる特集記事でした。
信託報酬がどれくらいならいいか、ですが、かつて「投信のユニクロ」というコンセプトで書いた記事では、「全部込みで年率0.5%以内」ならいいと思っています。これは、運用部分を投資顧問並みのコストで行い、直販すれば、信託銀行のフィーを叩かなくても十分可能な数字で、大手の運用会社なら、特段の工夫が無くても追随可能なくらいの目標です。
ファンドの海管理人 (2006/12/19 0:41:45)
わお! 山崎さま、コメントありがとうございます。大変光栄です。お送りしたトラックバックが公開されたので、ご本人であると確信しています。
信託報酬の件、0.5%以内というのは現在販売されている投資信託と比べると大きな差ですね。それでも専門家の視点から実現可能ということは、やはりまだまだ投資信託の手数料は大変高いということなんですね。参考になります。今後ともぜひよろしくお願いします。って、自分のブログのコメントなのに緊張してます。
カン・チュンド (2006/12/28 10:50:08)
こんにちは(ご無沙汰しています)カン・チュンドです。「投資信託は生活を楽しむための道具」という点にまったく同感です。ファンドが資産形成のメインの道具となれば、山崎さんがおっしゃるように運用会社直販のファンドが増えてくるでしょうし、純資産額の大きさによって信託報酬を引き下げるファンドも出てくるでしょう。「全部込みで年率0.5%以内」というのは十分可能です。確定拠出年金の株式インデックス・ファンドなんて年率0.2%台のものもありますから・・。
追記)遅ればせながらブログを開設しました。。
ファンドの海管理人 (2007/01/08 13:59:34)
カンさま、こちらこそごぶさたしてます。なるほど、直販というのもひとつのポイントなんですね。たしかに、僕も会社でやってる確定救出年金のファンドの信託報酬は、とても安いんですよ。一般には買えないんですけどね。
[トラックバックURL]