2007年07月16日

ピクテ投信がわざと不公平な資産運用をして1カ月の業務停止へ

金融庁は7月11日、ピクテ投信投資顧問に対して「投資信託及び投資法人に関する法律」に違反した、として1カ月の業務停止と4項目にわたる業務改善を命ずる行政処分を行いました。この違反は、投資信託業界全体の信用を大きく傷つける、重大な事件だと僕は考えています。

ピクテ投信は何を起こしたのでしょうか? NIKKEI NETは、短く次のように報道しています。

金融庁は11日、ピクテ投信投資顧問(東京・千代田)に対し、一部業務停止命令を出した。 (略) 運用成績が低迷しているファンドに、値上がりが見込まれやすい新規公開株を集中的に割り当てるなど投資家に不公平となるような運用を繰り返していたことが検査で判明したためだ。

金融庁、ピクテ投信投資顧問に一部業務停止命令 (2007年7月11日)

■金融庁の発表を読み解いてみる

もう少し、何が起きたのかを詳しく知るために、金融庁が発表した資料「ピクテ投信投資顧問株式会社に対する行政処分について」を読んでみることにしましょう。

金融庁が発表した資料の中で、ピクテ投信の違反についての説明は1段落だけで簡潔に表されています。そのまま抜粋します。

新規公開株式の恣意的な配分(忠実義務違反)

ピクテ投信投資顧問株式会社は、投資信託財産及び投資一任契約資産(以下、これら2つを総称して「運用資産」という。)の運用における新規公開株式への投資に当たって、平成13年12月以降、原則として運用資産の資産規模に応じた配分をする(以下「本件配分方針」という。)こととしていたが、配分を担当している運用部門の責任者において、本件配分方針に基づく配分を行わなければならないという認識が次第に希薄化し、パフォーマンスへの寄与度が大きくなるとの理由で資産規模の小さな運用資産に集中的に配分したり、パフォーマンスが相対的に低下した運用資産の改善策として一定期間に集中的に配分を行ったりするなど、本件配分方針を無視するような公平性を欠く配分を繰り返し行った。
(太字はファンドの海管理人による)

つまりこういうことなのでしょう。ピクテ投信は、値上がりしやすい新規公開株式を取得したら、それを複数の投資資産に分配するときには、規模に応じて比例配分しなくてはならなかったのに、そうしなかった。恣意的に配分して、特定の投資信託もしくは一任契約資産の運用結果をよくしようとした、と。

■一般投資家がお金持ちの犠牲になった可能性がある

しかも、ピクテのこの操作は「投資信託」と「一任契約」の両方の運用に関して行われていたのです。一任契約とは、だいたいがお金持ちが専門家に運用を任せる、というもの。多くの投信会社は、投資信託の運用と同時に、投資一任契約による運用も行っています。

だから、もしもピクテが投資信託の運用を犠牲にして、一任契約に新規公開株を優先して割り当てたのだとしたら、投資信託を購入した僕たち一般投資家は一部のお金持ちの犠牲になった、という可能性を否定できないのです。

ただし、どの運用結果を上げようとしたのか、どの運用結果が犠牲になったのかは明らかにされていません。しかし、この件を調査した証券取引等監視委員会は、間違いなくそれを知っていることが資料から読み取れます。たぶん、明らかにできないのでしょう。

そしてモーニングスターの報道によると、こうした操作の対象になった投資信託は、ピクテ・ニッポン・プレミア・グロースピクテ・グローバル・バランス・オープンピクテ・ニッポン・グロース・ファンド『愛称:ヤマト』e-ファンド@ピクテ清水グローバルバランス[為替ヘッジ型]『愛称:鼓動』の5本。

ちなみに、本件でピクテ投信が違反した法律の項目は、投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)第14条第1項です。その第14条1項を調べてみると、次のように書いてありました。

(受益者に対する義務) 第14条 投資信託委託業者は、委託者指図型投資信託の受益者のため忠実に当該委託者指図型投資信託の信託財産(以下この章において「投資信託財産」という。)の運用の指図その他の業務を遂行しなければならない。

■モーニングスターが投信業界に警鐘を鳴らす

モーニングスターはこのピクテ投信のニュースに敏感に反応しました。同社の解説を抜粋します。

この運用責任者の裁量により、得した投資家と損した投資家が存在するのは間違いなく、公平性が義務付けられている投資信託に対する信頼性が傷つけられたのは確かである。その責任は非常に重い。また、これは運用責任者一人の問題ではなく、コンプライアンス等の内部管理態勢の問題であり、会社全体の問題である。

ピクテ投信は会社全体で不公平な運用をしていたのです。受益者の信用を裏切った責任は重く、モーニングスターの上記の文章は的確にそのことを伝えてくれます。

しかも、多くの投信会社では、投資一任契約での運用も行っています。ピクテ投信が起こしたこの事件は、だから、ほかの投信会社でも、投資一任契約が優先されて、一般の投資家のお金を集めた投資信託の運用が犠牲になっている、といったことが起きているのではないかと、多くの一般投資家に疑念を抱かせる可能性があるのです。投資信託業界の信用を傷つける、とても重大な事件です。

投資信託業界は、この事件を重大に受け止めて、一般投資家がそのような疑念を抱かないように十分な健全性があることを何らかの方法でアピールすべきだと僕は思います。僕はこの事件は、これまでに僕が聞き、知った投資信託業界の中の事件でも、もっとも重大な事件だと思っています。

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美徳 (2007/07/16 15:14:29)

自浄作用の働かない業界は証券(含む資産運用)、銀行、電力、放送が代表例ですが、規制業種さらに高給与です。健全な競争業界の自動車、ガス機器、食品は会社存亡の危機に瀕します。
証券は規制というより競争業種の部類です。透明性の高い資産運用を期待します。つまらぬ月次レポートを書くより、売り買いの詳細を数ヶ月遅れでよいので公開すべきです。今の目論見書は資源の無駄遣いでしかありません。

水瀬 ケンイチ (2007/07/16 18:30:40)

これはひどい。
ピクテにはガッカリです。

信用のない人間・会社に運用を任せるくらいなら、機械的なインデックス運用のほうが、よほどスッキリしていて良く見えてしまいます。

世界のREIT (2007/07/17 22:42:07)

 たしかに、これは三菱東京UFJ銀行の投資信託販売に関して処分を受けた事案(←こちらは結構大きく報道されました)よりも、個人的にはむしろ悪質であるとさえいえると思います。

porco (2007/07/17 23:26:42)

そうだそうだ、ピクテの投信なんかたたき売っちまえ!もう二度と、ピクテの商品なんか買うもんか!!

ファンドの海管理人 (2007/07/18 0:28:14)

美徳さん、水瀬さん、世界のREIさん、コメントありがとうございます。Porcoさん、まあまあ落ち着いて。そう、アクティブ運用には不透明な部分がつきまとうので、インデックスのほうが操作の入り込む余地が少ないとはいえますよね。



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