2008年01月16日
“ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因”要約の解説(その1)
論文「Determinants of Portfolio Performance」を読み、日本語で要約したものを前回のエントリで紹介しました。歴史的なこの論文から、どのようなことが読み取れるのか? 僕なりに書きます。まず、この論文のテーマについて。
アセットアロケーション重要説の起源となる論文「Determinants of Portfolio Performance」(ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因)を要約したとはいえ、僕はまだこの論文の内容を完全に把握したわけではありません。それでも、要約を作ったことで、自分なりの理解が徐々に得られてきています。自分のメモのための意味も含めて、解説を記していきます。
今回のエントリでは、この論文のテーマをもういちど確認するのが目的です。そのために、この論文で中心的役割を果たしている用語を整理してみましょう。
論文の中で使われる最も基本的な用語“ポートフォリオ”(Portfolio)。これは、そもそも複数の金融資産や銘柄の組み合わせのことです。この論文では、データとして用いられた実際に運用されている91の年金など、リターンを得る目的で運用されるひとまとまりの資産を総称して“ポートフォリオ”と呼んでいました。そして“ポートフォリオ”こそが、この論文の分析対象でした。
ブリンソン氏らは、ポートフォリオのリターンは“アセットアロケーション”“マーケットタイミング”“銘柄選択”の3つによって構成される、としています。この3つの用語は原文ではそれぞれ“Investment Policy”“Market Timing”“Security Selection”と書かれています。
“Investment Policy”とは投資方針です。投資方針によって、どのようなアセットクラスを、どのような割合で組み合わせるのか、という基本的かつ長期的なアセットアロケーションの計画が示されます(そのため、要約では“アセットアロケーション”と意訳しました)。アセットクラスの具体的な例としては、現金、債券、株式などがあげられます。
例えばこの、現金、債券、株式の3つのアセットクラスを用いて「価格変動リスクを低く抑える」という投資方針があったとしたら、現金と債券の割合を高め、株式の割合を低くしたアセットアロケーションの設計が行われるでしょう。
“Market Timing”の訳はそのまま“マーケットタイミング”としましたが、これは意識的に特定のアセットクラスをオーバーウェイトにしたりアンダーウェイトにして、リターンを高めようとしたり、リスクを低減しようとしたりすることです。基本的な(かつ長期的な)アセットアロケーションは投資方針によって決められていますが、例えばこれから株価が急落すると予想したときには株を売って債券を買い、ポートフォリオの債券の割合を高めるといったことが、この“マーケットタイミング”にあたります。アセットアロケーションの短期的な変更ということですね。
“Security Selection”は“銘柄選択”と訳しています。アセットクラスを構成する銘柄を選ぶ際に、今後値上がりするものなど有望と思われるものを積極的に選ぶ、といった行為がこれに該当します。
これらの用語の意味が頭に入っていると、この論文のテーマがよりよく分かるようになると思います。
先ほどの繰り返しになりますが、ポートフォリオのリターンを決定する要素として、(1)最適なアセットアロケーションを考えること、(2)適切なマーケットタイミングで売り買いをすること、(3)最良と思われる銘柄を選択すること、の3つの手段があるわけです。そして、この3つのうちどれが最も大きく影響するのか? という問いに答えることが、この論文のテーマだったわけです。
そしてその答えは、ご存じのとおり。
調査結果によって示されたのは、マーケットタイミングや銘柄選択よりも、アセットアロケーションが最も大きくポートフォリオのリターンに影響を与える、ということだ。トータルリターンのうち93.6%がアセットアロケーションによる変動量であった。
次回のエントリでは、この結論について、もっと詳しく読みとってみます。
[関連エントリ]
・ 論文「Determinants Of Portfolio Performance」の要約
・ 論文「Determinants Of Portfolio Performance」を入手する!
・ “アセットアロケーションが重要”という説の起源を探す
・ アセットアロケーションの重要性に気が付く
・ ポートフォリオとアセットアロケーション
[関連カテゴリ]
・ C.アセットアロケーション
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