2008年01月30日

徹底解説:パフォーマンスの決定要因の分析に使われたデータ群

アセットアロケーションの重要性を論文で示したブリンソン氏ら。論文では、91の実際の年金の10年にわたるデータを分析対象にして、リターンの内訳を数学的に分析しようとしています。

論文「Determinants of Portfolio Performance」(ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因)で、ブリンソン氏らは91の年金データを分析対象にし、あるフレームワークを用いて、そのリターンがなにによってもたらされたのかを明らかにしようとしました。

ここでは、その分析方法について、論文を読んで僕なりに理解したことを解説していきます。今回のエントリでは、分析のために用意されたデータについて解説することにしましょう。

まず、分析対象の基本的なデータとして、実際に運用されている91の大型年金について、1974年から10年間の四半期ごとの運用結果が用意されました。

この91の年金ではさまざまな資産が運用されていましたが、どの年金にも含まれる「株式」「債券」「現金」の3つのアセットクラスに絞って調査対象としています(不動産、保険証券、外国株式といったアセットクラスが除外されました)。

91の年金は、それぞれがアクティブ運用されていました。そのため、年金ごとにアセットクラスの重み付けも、アセットクラスを構成する株式や債券の銘柄も異なっていまし、1つの年金をみても年ごとにそれらは変化しています。

下記に示す、論文中の“Table 4.”を改変した“Table 4'”では、そうした91の年金の概要を示しています。

Bhb_table4jp

この表では、10年間の運用期間を四半期ごとにみたとき、91の年金のポートフォリオのいずれかで、もっとも株式アセットクラスの割合が低かったときの値は37.9%であり、もっとも高いときには89.3%になったことが分かります。

そして、この91の年金データをもとに、もう1つポートフォリオを作成します。それは10年の全期間を通した91の年金のアセットアロケーションの平均(株式62.9%、債券23.4%、現金13.6%)を採用したポートフォリオです。しかも各アセットクラスのリターンには、それぞれのアセットクラスの代表的なインデックスのリターンを当てはめます。

ブリンソン氏らは、これを「ベンチマークポートフォリオ」としました(原文では“Policy Benchmark”)。

すなわち、このベンチマークポートフォリオは、「いちどアセットアロケーションを決めたらそのまま固定する。マーケットタイミングを狙わないし、銘柄選択はせずにインデックスによる平均のリターンにまかせる」というポートフォリオになります。

実際に運用されているポートフォリオで、マーケットタイミングに成功したり、銘柄選択がうまくいったならば、このベンチマークよりも高いリターンを得られるはずです。

これでデータは揃いました。ブリンソン氏らはこれらのデータを比較分析することで、リターンの中身について迫ろうとしています。

その分析方法については、また次回に。

[関連エントリ]
アセットアロケーションはどれほど重要か? 20年の議論の軌跡
“ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因”要約の解説(その2)
“ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因”要約の解説(その1)
論文「Determinants Of Portfolio Performance」の要約
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osa (2008/01/31 0:27:18)

初めまして。とても理論的な話題で興味があります。わざわざ、有料dataを購入されたのですね。頭が下がる思いです。
早く、続きを拝見したいです。

ところで、アメリカでは、シーゲルさんをはじめ(かどうか)として、実用的な研究をされる学者が多いのに、日本では皆無?に等しいのがとても残念です。

親に聞いたら、阪大が総合口座の裏技を論文に掲載したくらいだとか・・。親が学生の頃の論文だそうです。



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