2008年01月 4日
“アセットアロケーションが重要”という説の起源を探す
「資産運用の結果の大半はアセットアロケーションで決まる」という説明は、資産運用のアドバイスのさまざまな場面で繰り返されています。でもこれは、だれが言い始めたのでしょうか? そしてそれは本当なのでしょうか?
以前のエントリ「アセットアロケーションの重要性に気が付く」で、アセットアロケーションの意味について調べたとき、東京証券取引所の用語事典の「アセットアロケーション」には次のように書いてありました。
G.ブリンソンに依れば、トータル・パフォーマンスに占める「アセットアロケーション」の寄与は9割以上と言われていました。このブリンソン命題の解釈を巡っては、まだ議論がありますが、トータル・パフォーマンスに占める銘柄選定の寄与は驚くほど小さいことが知られています
東証:用語集 アセットアロケーション
“アセットアロケーションの寄与は9割以上”という言説は“ブリンソン命題”と呼ばれているようですね。そしてその説を打ち出した人が、ブリンソン氏のようです。もう少し調べてみましょう。
“ブリンソン”で検索したところ、投信資料館の「アセット・アロケーションの考え方」を見つけました。
ブリンソン・シンガー・ビーボワー(Brinson、Singer、Beebower)が1991年にFinancial Analysts Journal(May 1991)に発表した有名な論文「Determinants Of Portfolio Performance」によると、ポートフォリオのリターンの91%以上はアセットアロケーションで決まるということです。つまり、株式や債券の個別銘柄を選ぶことよりも、株式、債券、預貯金などに何パーセントずつ配分するといったアセットアロケーションの決定の方がリターンにとっては重要だというのです。
投信資料館 アセット・アロケーションの考え方
ブリンソン氏の論文の名前が「Determinants Of Portfolio Performance」だと分かりました。どうやらこれが、アセットアロケーション重要説の起源のようですね。もう少し調べましょう。
マネックスのブログ「マネログ」でも、「パフォーマンスの決定要因 <バンガード・海外投資事情>」というエントリでこの論文が取り上げられていました。
ブリンソンらによって1986年に公表された画期的な論文、「ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因」は、銘柄選択およびマーケットタイミング戦略はそれほど重要な役割を持つわけではなく、実はポートフォリオの資産配分方法こそパフォーマンスの主要な決定要因であると結論づけていました。
マネログ - ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因
論文「Determinants Of Portfolio Performance」の翻訳された題名が「ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因」のようですね。
このブリンソン氏の論文の検証を、米国の投資信託会社であるバンガードが行ったと、同じく「マネログ」の「リターンの77%を決定するものとは・・・」というエントリで紹介されています。
IC&Rチームは、ブリンソン氏と同様の方法で、1962年から2001年の少なくとも5年以上のリターン実績を持つ、420のアクティブ運用のバランス型ミューチュアル・ファンドを調べました。その結果、氏と同様の結果が得られることがわかったのです。調査対象ファンドの月次リターン差異の77%が、概してファンドのアセット・アロケーション方針の違いによるものと判断できました。
マネログ - リターンの77%を決定するものとは・・・
マネックスの内藤忍氏は、「投資の成果は80%が資産配分で決まる!」と主張されていますが、恐らくこの77%という結果を引用されているのだと想像します。
ほかにも、日興コーディアル証券のファンドラップ商品「グローバルポート」の説明のなかで、ブリンソン氏の論文が引き合いにだされています。
米国における研究※によれば、ポートフォリオのパフォーマンスに影響をおよぼす最大の要因は、 そのポートフォリオの資産配分にあることが実証されています。※米国年金基金の1978年から1987年の投資収益率の分析結果より
左図出所: “Determinants of Portfolio Performance,”Financial Analysts Journal July/August 1986 edition
日興SMA/ファンドラップ:グローバルポート トップ
ブリンソン氏の論文は、All About マネーの「20世紀の大発見はアセットアロケーション!」という記事でも紹介されています。
一般の人が注目している銘柄選択や売買タイミングが収益に与える要因が10%もないということは、投資初心者にはショックな真実です。これは、アメリカのブリンソン教授が発表した調査結果ですが、さらにイボットソンアソシエイツもアッセトアロケーションの重要性を裏付ける統計を発表しています。
All About マネー - 20世紀の大発見はアセットアロケーション!
ちなみに、翻訳された題名と思われる“ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因”で検索すると、トップに出てくるのはカン・チュンド氏のブログ「カン・チュンドの 投資のゴマはこう開け!」でした。
これが有名な 「ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因」です。※ 1986年 ブリンソン・ビーバウワー・フッドの三氏により「ファイナンシャル・アナリスト・ジャーナル誌」に発表された論文。
この論文は、長期的に見れば、個別銘柄の選択や、市場タイミングを計る手法はポートフォリオの収益にはほとんど貢献しないことを喝破しています。
カン・チュンドの 投資のゴマはこう開け! - ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因とは?
さてさて、ここまで調べれば、ほぼ間違いなくブリンソン氏の論文「Determinants Of Portfolio Performance」(ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因)がアセットアロケーション重要説の起源と考えてよさそうです。
論文であれば、公開されているか出版されていて、読めるはずですよね。ということで、今度はこの論文を入手してみることにします。
[関連エントリ]
・ ポートフォリオとアセットアロケーション
・ アセットアロケーションの重要性に気が付く
・ 内藤忍氏が勧めるアセットアロケーション
・ アセットアロケーションを守る方法
[関連カテゴリ]
・ C.アセットアロケーション
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≫次 : 論文「Determinants Of Portfolio Performance」を入手する!
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