2008年02月 2日

徹底解説:パフォーマンスの決定要因を分析するフレームワーク

ポートフォリオのリターンを決定する要因として重要なのは何か? この問いに答えるために、ブリンソン氏らは4つの四角から構成されるフレームワークを考案しました。今回は論文の主役であるフレームワークについて。

前回のエントリ「パフォーマンスの決定要因の分析に使われたデータ群」で、分析のためのデータを用意しました。このエントリでは、それを分析する手法としてのフレームワークを紹介します。

ブリンソン氏らの論文「Determinants of Portfolio Performance」(ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因)の最大のポイントは、リターンが運用のどの要因によって影響を受けたのかを数学的に分析できる、このフレームワークを開発したことです。

このフレームワークこそ、この論文の全てといっても過言ではありません。このエントリは全力でそれを解説することに取り組んでいます。ぜひじっくり読んでみてください。

それでは解説を始めましょう!

ブリンソン氏らは、ポートフォリオのリターンを決定する要素として、(1)最適なアセットアロケーションを考えること、(2)適切なマーケットタイミングで売り買いをすること、(3)最良と思われる銘柄を選択すること、の3つのがあると考えました。

この3つの要素を、互いに関連する4つの四角で表したものが、論文で“Table 1.”として示された図です。これが、パフォーマンスの決定要因を調べるためのフレームワークにほかなりません。

Bhb_table1

分かりやすいように図中の文言を意訳して“Table 1'.”を作りました。

Bhb_table1jp

図では、(I)から(IV)までの4つの四角が描かれています。それぞれの四角は、以下の値を想定しています。

(I)アセットアロケーションによるリターン
(II)アセットアロケーションとマーケットタイミングによるリターン
(III)アセットアロケーションと銘柄選択によるリターン
(IV)アセットアロケーションとマーケットタイミングと銘柄選択によるリターン

そして、図の下部で示されているように、それぞれは次の数式で表されるとしています。

アセットアロケーションによるリターン
=(I)

マーケットタイミングによるリターン
=(II)-(I)

銘柄選択によるリターン
=(III)-(I)

マーケットタイミングと銘柄選択によるリターンの合計
=(IV)-(I)

つまり、(I)から(IV)までを具体的な数値として求めることで、リターンが何の要素によって、どれくらいもたらされたか、が分かるのです。

では、その数値はどうやって求めるのでしょう?

論文で示された図“Table 2.”では、(I)から(IV)の値の算出方法が数式で示されています。

Bhb_table2

図を読み解いていきましょう。

(I)は、数式“Σi(Wpi×Rpi)”で表されていますね。これはどういう意味でしょう? 数式の左から見ていきます。

Σとは“合計する”という意味です。

Wpiとは、パッシブに運用されたポートフォリオにおける、あるアセットクラスの割合です。図中のWpiの説明の単語を並べ替えると分かりやすいかもしれません。

Wpi = Weight passive for asset class i

Rpiとは、そのアセットクラスのインデックスのリターンです。

Rpi = Return passive for asset class i

“asset calss i”とは、任意のアセットクラスのことを表しますが、この論文では分析対象のデータを“株式アセットクラス”“債券アセットクラス”“現金アセットクラス”の3つに絞っているので、具体的にはこの3つが該当します。

具体的にWpiに当てはまる値とは何でしょうか? この、パッシブに運用されたときのアセットクラスの割合とは、ベンチマークポートフォリオのアセットアロケーションのことです(ベンチマークポートフォリオについては、前回のエントリ「パフォーマンスの決定要因の分析に使われたデータ群」参照)。

ベンチマークポートフォリオは、10年の全期間を通した91の年金のアセットアロケーションの平均(株式62.9%、債券23.4%、現金13.6%)を採用したポートフォリオです。この割合は10年間一定としています。しかも各アセットクラスのリターンには、四半期ごとにそれぞれのアセットクラスの代表的なインデックスのリターンを当てはめています。

ですから、Wpiはベンチマークポートフォリオにおける、あるアセットクラスの割合のことであり、Rpiはそのアセットクラスのある四半期におけるインデックスのリターンのことになります。

つまり、“Σi(Wpi×Rpi)”とは、ベンチマークポートフォリオの3つのアセットクラスについての(割合×リターン)を合計した結果になります。

「アセットアロケーションによるリターン」と定義された(I)に、ベンチマークポートフォリオのリターンがそのまま当てはまるのは当然のことといえます。ベンチマークポートフォリオはマーケットタイミングを行わず、銘柄選択も行っていない、固定されたアセットアロケーションだけによって得られたリターンだからです。

次に(IV)についてみてみましょう。

(IV)は、数式“Σi(Wai×Rai)”で表されています。同様に考えると次のようになります。

Waiとは、実際にアクティブ運用されたポートフォリオの、あるアセットクラスの割合です。マーケットタイミングを実行していれば、平均的な割合よりも多いか少ないはずです。

Wai = Weight active(actual) for asset class i

Raiとは、そのアセットクラスの実際のリターンです。銘柄選択がされているはずなので、インデックスより上回っているか、もしかしたら下回っていることでしょう。

Rai = Return active(actual) for asset class i

これらを3つのアセットクラスについて計算し、合計したものが、数式“Σi(Wai×Rai)”の結果となります。

具体的なWaiとRaiの値は、実際に運用されている91の年金の四半期ごとのアセットクラスの平均割合と、そのアセットクラスの平均リターンを当てはめることになります。

(IV)に、実際に運用されている91の年金のリターンが当てはまるのも当然です。これらは(IV)の定義どおり「アセットアロケーションとマーケットタイミングと銘柄選択によるリターン」がすべて含まれたリターンだからです。

これで、Wpi、Rpi、Wai、Raiの4つの値を知ることができましたので、(II)(III)も計算することができます。

(II) Σi(Wai×Rpi)

アセットクラスのアクティブな割合と、インデックスのリターンを掛けたものが(II)です。マーケットタイミングによって得られるリターンが分かります。

(III) Σi(Wpi×Rai)

ベンチマークポートフォリオのアセットクラスの割合に、アクティブ運用されたアセットクラスのリターンを掛けたものが(III)です。銘柄選択によって得られるリターンが分かります。

これら(I)から(IV)を四半期ごとに計算し、平均した結果が論文の図“Table 5.”です。

Bhb_table5

ただし、(IV)の値は株式アセットクラス、債券アセットクラス、現金アセットクラスだけでなく、調査対象となった91の年金のリターン全体から計算したとのことです。論文の注釈によると、それでも結論は3アセットクラスのみで計算したときとほとんど変わらなかった、とのことでした。

次のエントリで、いよいよ結論部分について読み解いていきます。

[関連エントリ]
パフォーマンスの決定要因の分析に使われたデータ群
アセットアロケーションはどれほど重要か? 20年の議論の軌跡
“ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因”要約の解説(その2)
“ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因”要約の解説(その1)
論文「Determinants Of Portfolio Performance」の要約
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“アセットアロケーションが重要”という説の起源を探す
アセットアロケーションの重要性に気が付く
ポートフォリオとアセットアロケーション

[関連カテゴリ]
C.アセットアロケーション

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