2008年11月30日
再考:株式投資に複利効果はあるのか?
いままで株式に投資し続けることは複利の効果を生む、と信じていました。しかしシミュレーションの結果はどうやら、必ずしも複利の効果をもたらすものではない、ということを言っているように見えます。
前回の緊急調査:株式投資に複利効果はあるのか?で、「期待リターンが10%、リスク(つまり標準偏差)が0.33333...」の株式に対して、たくさんのパラレルワールドで同時に5年間の投資を行うというシミュレーションを行いました。
その結論として僕は
シミュレーションに間違いがなければ、平均で見ればなんとなく複利の結果になっているような気がします。どうでしょう
と書きました。
ブログを書き終えて、僕はお風呂を浴びて、布団に入って眠ろうとしました。そして布団の中でもう一度考えました。「あれは本当に複利の結果になっているんだろうか」と。そして布団の中でこう思いました「いや、違うぞ。中央値についてもっとよく考えなきゃ」。睡魔がやってきて僕は眠ってしまいましたzzzz。
もう一度、前回の各パラレルワールドの結果をまとめた表をみてみましょう。
| 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | |
| 平均値 | 1.909 | 1.209 | 1.320 | 1.458 | 1.635 |
| 中央値 | 1.109 | 1.116 | 1.196 | 1.246 | 1.323 |
| 10%複利 | 1.1 | 1.21 | 1.331 | 1.464 | 1.61 |
前回は平均に注目していたのですが、実は注目すべきは中央値なのです。
平均値と中央値はどう違うのでしょう。
サラリーマンが5人いるとします。それぞれの月給は、20万円、20万円、30万円、30万円、200万円だったとしましょう。この5人の月給の平均は、60万円。それなりに高給取りの集団のように見えますが、実は高給取りなのは1人だけ、あとは普通の月給の人たちです。
ところがこの5人のサラリーマンの中央値で見ると、ちょうど真ん中の月給の人は30万円ですから、中央値30万円。これなら、5人中4人の実態に近い数字にみえます。
これが中央値です。
ではもういちど、先ほどのパラレルワールドの投資結果の表を見てみましょう。中央値はどうなっているでしょうか? 明らかに複利の値を下回っています。ということは!
ということは、パラレルワールドの投資家を結果順にずらりと並べたとします。そうすると、ちょうどその真ん中にいる投資家の結果は、複利の値を下回っている、ということです。つまり、投資家の半分以上が複利の結果を上まわってないのです。
これでは「株式の複数年の投資は複利で計算できる」とはいえないのではありませんか? 複利の結果が得られるのは、半数以下の人たちなのですから。
このシミュレーション、本当にモデルとして正しいのでしょうか。僕はまだ確信が持てずにいます。僕は2つの疑問+アルファを抱いています。
(1)株価のばらつきは、正規分布ではなく対数正規分布やベキ分布である、という説も読みました。しかし、それらでシミュレーションし直したとしても、それほど大きな違いはないように思えています。だとしたら、このシミュレーションはおおむね正しいのではないでしょうか。
(2)2年目以降のグラフの形は対数正規分布に似ているように思えます。正規分布の結果に対して正規分布を掛けているのですから、理屈の上でもそうなるのが自然に思えます。これは正しい見方でしょうか? だとしたら、対数正規分布の式をどのように導き出せばいいのでしょう?
(3)もし2年目、3年目、それ以降の結果が対数正規分布に従うのなら、計算でそれらの期待値と分散も計算できますよねたぶん。しかしその計算方法を勉強しなくては。
うーむ。というわけで新宿の紀伊国屋で本を買ってきました。本当に予備知識もないので、基礎から勉強ですよ。いきなり難しいところまでいけないので、まずはここから。

こういうのってリアルに現実の問題を解いている楽しさがあって、学校の課題を解いているのとは違う知的興奮がある一方で、実際のところ「あちゃー、難しい問題に手を出しちゃってまいったなあ」と思ってます。はい。詳しい方、ぜひいろいろコメントよろしく、その際には基礎知識のない僕にも分かるようにおねがいします! できれば、コメントは手短に、ご自分のブログで詳しく、なんてパターンだと最高です。
このテーマの記事一覧
第1話:緊急調査:株式投資に複利効果はあるのか?
第2話:再考:株式投資に複利効果はあるのか?
第3話:改題:投資信託の長期投資は複利なのか?
第4話:追求:投資信託の長期投資は複利なのか?
第5話:さらに追求:投資信託の長期投資は複利なのか?
第6話:中間報告:投資信託の長期投資は複利なのか?
第7話:どうやって投資信託の値動きのシミュレーションをしたのか
第8話:長期保有の値動きシミュレーションを公式化してみよう
第9話:投資信託を長期保有したら複利になるのか、の参考文献
第10話:投資信託を長期保有したらどうなるか、20年分のシミュレーション
第11話:その投資信託のN年後のリスクを計算する方法(概算で)
第12話:続:その投資信託のN年後のリスクを計算する方法(概算で)
第13話:投資信託のリターンは対数正規分布に従うらしい、けど厳密には違うらしい
第14話:リスクがあるとき、複利はひとり勝ちを生む
第15話:TOPIXを20年保有したシミュレーション。元本割れの確率は?
第16話:高いリスクこそが破壊的な結果をもたらすのではないか
第17話:まとめ:長期保有のリスクとリターンについて分かったこと(前編)
第18話:まとめ:もしくは再検討の予告
[関連カテゴリ]
・ 6.投資方法・ドルコスト平均法
[広告]
≫次 : 改題:投資信託の長期投資は複利なのか?
≪前 : 緊急調査:株式投資に複利効果はあるのか?

投資信託を趣味にしているビジネスマン、イーノ・ジュンイチです。いつもご愛読ありがとうございます!




複利の効果が得られるのは、その投資対象が確実に上がり続けるときだと思います。
つまり、未来永劫株式市場が上がり続けるという理論は、常に変化していくものではないでしょうか?
http://www.nli-research.co.jp/report/pension_strategy/1996/vol001/str9606d.pdf
>単に時間分散効果を根拠にして、ハイリスク資産への投資を正当化する考えは短絡的過ぎるように思われる。
手抜きコメントですみません。やる気と時間があったら自分のブログに詳しく整理します。その時はまたリンクを張らせていただきますのでご覧いただけるとうれしいです。
(1)正規分布とベキ分布の違いは、極端な値になる確率が違うことです。今回のような下落が1万年に1回なのか100年に一回なのか、という具合に。
正規分布と対数正規分布の違いは、正規分布は中央値と平均値が一致しますが対数正規分布は中央値の方が小さくなり、まさに現在お悩みの問題に合致します。
(2)単純に株価にlogをつけて騰落率のシミュレーションをして最後にexpをつけて戻してください。
(3)同じく株価にlogをつけて普通の正規分布に変換してから平均、分散を計算してください。
2年目以降が問題なのではなく、1年目を対数正規分布として、以降は乗算ではなく加算していけば、数学的には解決します。
ランダムウォークモデルには、疑問がありますが。。。
Sean.さん
残念ながら解決しません。
対数正規分布だろうが二項分布だろうが、足していけば正規分布に近づきます。
複利=乗算です。
確率1/2で50%減るか100%増えるか、という投資は、期待値的には有利に見えますが、10年複利運用したときの中央値は5年は倍に、5年は半分になりますからちっとも増えません。
これは-50%と+100%の相加平均は+25%ですが、相乗平均は√(0.5x2)=1だからです。
無リスクで+25%ならば複利運用すれば1.25^10で莫大ですが、リスクがある場合は相加平均ではなく相乗平均で見て1を超えている必要があります。
(勿論上の例では、1/1024の確率で1024倍という膨大な利益になることもありますが)
さらに上の例で手数料1%として、確率1/2で51%減るか99%増えるか、という投資にすると、相加平均では+24%ですが相乗平均ですと1より小さくなるので、複利運用すると中央値はマイナスリターンになります。
ではどうやって解決するかというと、もし相関が低く同様の投資成果が得られる投資機会が複数あるなら、分散投資により、確率1/2で51%減るか99%増えるかではなく1に近い確率で+24%のリターンが得られるようにしてから複利運用すれば良いのですが、株式同士だと相関が高いですからね。
預金王さん、COLEさん、sean.さん、コメントありがとうございます。
COLEさん、今回のコメントで少し分かってきました。具体的なアドバイスありがとうございます。計算方法を教えていただいて、ずいぶん勉強の手間が省けたような気がします:-)
sean.さんのランダムウォーク仮説への疑問(前記事のコメントによると、トレンドラインは存在するのでは、というもの)は、大事なポイントだと思います。ただ、今回用いた正規乱数での株価のシミュレーションは、どの金融の参考書でも見かける一般的な方法だと思ってます(近似ではありますが)。それを複数年続けたらどうなる? というのが今回のシミュレーションの面白いところですよね。別のモデルでシミュレーションするとすれば、なにかそれをサポートする既存の理論があると説得力が増すと思うのですが、いかがでしょうか。
追加です。あれからいくつかWebサイトを見て勉強してみました。実は、今回のシミュレーションで最大の悩みは、まれに株価がマイナスになるケースがあることでした。これが「株価のシミュレーションであると確信が持てない」理由だったのですが、調べてみると、ウィーナー過程? 幾何ブラウン運動? といったキーワードが見つかりました。幾何ブラウン運動の結果は対数正規分布になるとのことで、イイ線行ってるような気がしますが、この辺、もう少し調べてみようと思います。
COLEさん
舌足らずなコメントにご指摘いただき、ありがとうございます。
正確には、『データの対数を取ったものを正規分布で近似し、その正規分布の加算で処理していけば、全て正規分布で扱える』ということを言いたかったので、COLEさんの趣旨と一致していると思います。
イーノさん
一般的な金融理論では、複数年の累積はどのように扱われているのでしょうか?
トレンドラインに関する理論は不勉強で承知しておりませんが、イーノさんが以前に紹介されている文献で、「タイミングは重要ではない」という結論が出ておりましたね。これは、『短期的にはばらつきがあっても、時間の経過と共にトレンドの影響が大きくなる』という意味だと解釈しております。つまり、『長期的なパフォーマンスは、短期的なばらつき(乱数のような)の累積ではない』と言うことになるのではないでしょうか。
sean.さん。
>一般的な金融理論では、複数年の累積は
>どのように扱われているのでしょうか?
それについては実は資料が見あたりませんでした。それで今回のように自分で調べることになった次第なのです。金融の商売的には「1年の利回り」さえ説明できればいいってことなんですかね。長期の利回りを計算する方法がこれだけ探して、ないってことはそうなんでしょうか。もやもやします。
トレンドラインについては、このページの、ウィーナー過程の中のドリフト項がその役割を果たしているのではないかと思い当たるようになりました。
http://www.findai.com/yogo/0026.htm
だとすれば、それは正規分布にすでに含まれていて、あとはさらに株価のシミュレーションを正確にするために、正規分布ではなく対数正規分布にすれば解決しそうですし、いまはそっちのほうが正しいシミュレーションではないかと思うようになっています。
今回のシミュレーションは、金額ベースで考えると納得がいきます。複利なので、毎年元金は変わることも影響していると思います。
期待に添えるかわかりませんが、自ブログで考察してみました。
イーノさん、ウィーナー過程の紹介ありがとうございます。
用語を今までの議論と合わせるように書き換えると、ウィーナー過程は次のような式となります。
変化量=トレンド部分 +リスク部分
=トレンド係数X経過時間 +
リスク係数X変動量(標準正規分布に従う変数)X√経過時間
●トレンドとリスクを分割している。
●トレンド部分は時間に比例する。
●リスク部分は時間の平方根に比例すると共に、標準正規分布に従った変動量に依存する。
リスク部分が時間の平方根に比例しているので、経過時間が長くなればなるほど、リスクの割合が相対的に減少して、トレンドの影響が大きくなっています。実際の株価に適合するかどうかは分かりませんが、感覚的には正しそうに感じます。ただ、妥当なパラメータの推定は面倒そうですね。
> ウィーナー過程の中のドリフト項がその役割を果たしているのではないかと....
> だとすれば、それは正規分布にすでに含まれていて、
ドリフト項(上記式のトレンド部分)は、正規分布とは独立していますよね。
sean.さん、
ご返事ありがとうございます。
・複利=掛け算=logつけたら足し算
・完全に独立ではなくても、相関が低い確率変数を足していけば正規分布に近づく
よって複利で考えるならlogをつければ正規分布に近づくので、logをつける前のは対数正規分布に近づく
ですね。
イーノさん
話のまとまりが悪くてすみません。
対数正規分布からスタートするよりも
・分布は何でも良いから掛け算していくと対数正規分布に近づくので、イーノさんのシミュレーション結果が正規分布に近づかず、対数正規分布に近い偏った分布になるのは不思議は無い
というのが私の一番の趣旨です。
その上で、
・毎年のリターンは毎月のリターンを12個かけたものであり、さらに言うと毎日のリターンを約250個かけたものなので、対数正規分布に近い。だからシミュレーションには対数正規分布を使うのが良いと思います。
というのが二番目の趣旨です。
そして
・シミュレーションするには分布の種類だけでなくパラメータも必要。それは実際の株価、基準価格のデータを対数変換してから推定すればよいと思います。
が三番目の趣旨です。
毎日(毎年)の株価の対数の差の平均と分散を調べて、それで正規乱数を発生させて、それにexpをつけたもの(expがついているので必ず正ですね)を順次かけていけば良いです。
[トラックバックURL]