2008年12月 9日

投資信託を長期保有したらどうなるか、20年分のシミュレーション

さてお待ちかねの、投資信託を長期保有したらどうなるかのコーナーがやってまいりました。今日のテーマはシミュレーション。それも20年分です。

いままでは5年分のシミュレーションしかしてこなかったのですが、シミュレーションのノウハウもたまってきたので、ここで一気に20年分のシミュレーションをしてみました。その結果はとっても面白いですよ!

まずシミュレーションの前提として、いままでと同じように年間の期待リターン10%、リスク0.3333....(つまり上下にほぼ100%変動する)の投資信託を想定します。これを20年間保有するシミュレーションを3000回行いました。

結果はこんな感じ。例によってグラフの制約上、任意の256回分をグラフ化しています。

Simula41

ものすごく儲かるケースもあれば、全然もうからないケースもある。グラフに描き切れていませんが、20年で元本の50倍以上100倍近くになっているケースもありました。しかし、大多数のケースではグラフでも分かるように10倍以下に集中しています。

3000回のシミュレーションの結果にどれくらいばらつきがあったかを示したのが、下記のグラフ。これは3000回全部を集計しています。

Simula42

1年目は、元本が0.7倍から1.4倍になったあたりに集中しているのがすごくよく分かります。2年目でグラフの山がなだらかになって、おおむね元本の0.7倍から1.6倍くらいのあいだになり、3年目以降もどんどんグラフが平坦になって、どんどん結果がばらついていくのが分かります。20年目になると、0.5~1.0あたりをピークにゆるやかに右方向になだらかになっていきます。それにしても、20年目でも1以下、つまり元本割れしているケースがけっこうありますね……ほとんどのケースで1以上になってはいますが。

で、衝撃的なのが以下の平均、標準偏差、中央値の表です。比較に10%複利の値も入れました。

1年目2年目3年目4年目5年目
平均値1.1101.2281.3471.4911.640
標準偏差0.3380.5450.7330.9531.243
中央値1.0631.1271.1961.2611.323
10%複利1.11.211.3311.4641.61

6年目7年目8年目9年目10年目
平均値1.8091.9882.1762.4182.642
標準偏差1.5381.8452.1862.6473.073
中央値1.4091.4651.5531.6301.681
10%複利1.7711.9492.1442.3602.593

11年目12年目13年目14年目15年目
平均値2.8803.1843.5753.9984.357
標準偏差3.5224.1845.2096.4107.105
中央値1.7491.8862.0082.1082.238
10%複利2.8533.1383.4523.7974.177

16年目17年目18年目19年目20年目
平均値4.7295.2205.7286.2276.927
標準偏差7.9249.04310.11011.19713.214
中央値2.3352.3352.5792.7102.894
10%複利4.5955.0545.5606.1166.727

標準偏差がどんどん大きくなって、つまり結果のばらつきがどんどん広がっていくのが分かります。つまり20年も保有していると、すごく儲かるケースもあれば、全然儲からないケースもあって、その差がすごく大きくなるということです。リスクが広がっている。

そして中央値に注目してください。中央値は全然複利に追いついていません! 中央値というのは、今回の3000回のシミュレーションを結果の悪い方から並べていってちょうど真ん中、1500ケース目の結果のことです。つまり、やっぱり過半数以上の人が複利に追いついていなくて、しかも複利に届かない人がどんどん増えていっているんです。

で、「長期保有の値動きシミュレーションを公式化してみよう」でやったように、この結果に合うような公式を考えてみましょう。この記事でも書きましたが、このグラフを近似する対数正規分布は「平均」と「標準偏差」の2つの値だけで示すことができます。ですから、毎年の平均と標準偏差を求めらる公式があればいいわけです。

で、平均はこういう求め方を考えました。

N年目のリターンの平均値=期待リターン^N

今回も期待リターンが10%で設定したので、20年目であれば、1.1^20ということで6.727(複利の欄に書いてありますね)。シミュレーションの結果が6.927ですし、まあこの公式は合っているでしょう。

標準偏差はどうでしょう。前述の記事では、

N年目の標準偏差=リスク*((√2)^(N-1))

という仮説を立てました。これで計算してみると、241.356。シミュレーションのデータの標準偏差は13.214ですから、これはちょっと違いすぎですね。では、コメント欄で教えてもらったこの仮説はどうでしょう?

N年目の標準偏差=N年目のリターンの平均値 * √N * 標準偏差

20年目のリターンの平均値は6.927、標準偏差は0.3333で設定しましたから、計算すると、10.326。これでOKと言い切るのは微妙ですが、とはいえ先の結果よりはずっとましですね。

公式化については、引き続き検討していくことにしましょう。

追記:シミュレーションに利用したワークシート(simulation03c.xls)を公開します。2.5Mバイトほどあります。

このテーマの記事一覧
第1話:緊急調査:株式投資に複利効果はあるのか?
第2話:再考:株式投資に複利効果はあるのか?
第3話:改題:投資信託の長期投資は複利なのか?
第4話:追求:投資信託の長期投資は複利なのか?
第5話:さらに追求:投資信託の長期投資は複利なのか?
第6話:中間報告:投資信託の長期投資は複利なのか?
第7話:どうやって投資信託の値動きのシミュレーションをしたのか
第8話:長期保有の値動きシミュレーションを公式化してみよう
第9話:投資信託を長期保有したら複利になるのか、の参考文献
第10話:投資信託を長期保有したらどうなるか、20年分のシミュレーション
第11話:その投資信託のN年後のリスクを計算する方法(概算で)
第12話:続:その投資信託のN年後のリスクを計算する方法(概算で)
第13話:投資信託のリターンは対数正規分布に従うらしい、けど厳密には違うらしい
第14話:リスクがあるとき、複利はひとり勝ちを生む
第15話:TOPIXを20年保有したシミュレーション。元本割れの確率は?
第16話:高いリスクこそが破壊的な結果をもたらすのではないか
第17話:まとめ:長期保有のリスクとリターンについて分かったこと(前編)
第18話:まとめ:もしくは再検討の予告

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6.投資方法・ドルコスト平均法

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インデックス投資で思うこと (1) [かえるの気長な生活日記。から]

やすとも (2008/12/09 0:46:33)

すばらしい!Excelの計算も時間が掛かったんじゃないですか。
20年も経つと、平均値は7倍近くになるのに、中央値だと3倍にも満たないんですね。また、5年までだと直線に思えた標準偏差もさすがに直線から外れてますね。

ファンドの海管理人(イーノ) (2008/12/09 1:06:04)

やすともさん、こんばんは。いつもコメントありがとうございます。
中央値と平均の違いがどんどん大きくなるのは、何度見てもショッキングですね。このシミュレーションは、あえて標準偏差を大きくとっていますから、違いも大きく出てしまうとはいえ、こうも違うものかと思います。
中央値の出し方も確認しなければ....

カピバラ (2008/12/09 1:52:01)

イーノさん、いつも楽しく拝見しています。

実は私も似たようなシミュレーションをやってみたことがあります。
http://blogs.yahoo.co.jp/capybara_tarbagan/9368763.html

分布は正規分布のままですし、いい加減な計算ですが、リスク資産と無リスク資産とを一定割合で毎年リバランスし、かつ、生活費を引き出しながら、40年間過ごすとどうなるか、というシミュレーションです。

計算指標は若干違うのですが、私の結果から類推すると、恐らく、リスク資産の割合を一定(0.6程度?)に押さえてリバランス運用すると、リスク資産100%のときと同等の中央値をより低いばらつきのもとで得られる、という結果になるのでは、と想像しています。

一度、リバランスの効果についても検討してみてはいかがでしょうか?

ファンドの海管理人(イーノ) (2008/12/09 2:29:33)

カピバラさん、こんばんは。
僕のシミュレーションは、ある投資信託がずっと10%リターン、0.3333%リスクを維持したとして、それをずっと保有したときのシミュレーションでして、その中身はブラックボックスになっているんです(上記になっていれば中身は問わない)。ですので、リバランスは関係ないんですね。
途中で換金したり、リターンを変化させてみる、というシミュレーションは面白そうなのですが、ちょっと目的が違うようです。

COLE (2008/12/09 23:30:11)

標準偏差が合わないのは、先日
> exp(x)=1+x+x^2/2+…という展開式を第二項で打ち切るという荒っぽい近似をすれば、exp (Nσ^2) - 1≒Nσ^2なので分散は平均の二乗*N*σ^2、つまり標準偏差は平均*√N*σになります。
の近似がNが大きくなるほど誤差が大きくなるからです。それから
> ここでのσは対数正規分布にLogをつけた元の正規分布のσです。
をお忘れなく。

> 公式化については、引き続き検討していくことにしましょう。

公式の誤差を減らそうとすると、近似を使わなかった式になります。正確だけれど計算がややこしくなります。

カピバラさんが考察なさっているリバランスの最適比率を考察したのがKelly基準です。「天才数学者はこう賭ける―誰も語らなかった株とギャンブルの話」という本にも載っています。
生活費の引き出しを含めて考えるのは初めて見ました。この方が実際的ですね。

ファンドの海管理人(イーノ) (2008/12/10 0:12:38)

COLEさんこんばんは。近似していて差がでてくることは、今日読み返していて気が付きました。そのとおりですね。
標準偏差の公式についてはあきらめるか、正規分布のN年後の標準偏差で代替するかなあと思っています。毎度質問ばかりで申し訳ないのですが、正規分布の場合のN年後の標準偏差の求め方でアドバイスがあれば教えてください。
あと、元のσの件、たしかに間違えてました。元のσだと0.296くらいなのであまり違いがなくて見逃してしまったようです。

Kelly基準というもの、はじめて聞きました。こうやって素人がよってたかってシミュレーションするの発想は、実は専門家と一緒なんだなあと思わせられます。

COLE (2008/12/10 8:33:55)

どんな確率分布でも沢山足していけば正規分布に近づきます。正規分布を足していけば正規分布のままです。これが中心極限定理です。
同じ理由で、どんな確率分布でも沢山掛けていけば対数正規分布に近づきます。

従って
> 正規分布のN年後の標準偏差で代替するかなあと思っています。
> 正規分布の場合のN年後の標準偏差の求め方でアドバイスがあれば教えてください。

・毎年のリターンを正規分布にしても、複利(掛け算)で運用する限りはN年後のリターンを計算するには対数正規分布の標準偏差の公式を使う事になります。
・それを正規分布のN年後の標準偏差で代替するということは、複利でのシミュレーションを諦めて単利(足し算)で運用する事になります。
それでも構わないのでしたら、山崎氏が書かれたように√N倍になります。



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