2008年12月15日

続:その投資信託のN年後のリスクを計算する方法(概算で)

ある投資信託があったとして、1年間のリスクが分かっているときに、N年後のリスクを計算するにはどうすればいいのだろう? という問題について前回から調べてきました

前回は、専門家向けの本に

n年間投資すると、リターンはn倍になるのに対してリスクは√n倍にしかなりません。

と書いてあって、実際にこれに従って以下の式で計算してみたわけです。

N年目のリスク = N年目期待リターン × √N × リスク

いつものように、期待リターン1.1、標準偏差(=リスク)0.3333...の投資信託を想定して計算をしました。それをシミュレーションと比較した表が以下です。

標準偏差の比較1年目5年目10年目15年目20年目
シミュレーション0.3381.2433.0737.10513.214
計算結果0.36661.2002.73405.392710.0286

うーん、近似しているといえばいえなくもない、という感じでしょうか。

で、このシミュレーションは対数正規分布に従った乱数を生成して行っています。もしかしたらこれがよくなくて、正規分布に従った乱数を生成してシミュレーションを行ったらこの式は成り立つのではないか、と想像したわけです。そこで、やってみました。正規分布に従った乱数を用いたシミュレーション。

同じように、期待リターン1.1、標準偏差(=リスク)0.3333...の投資信託を想定し、1年後の結果が正規分布になるような乱数を生成して複数年保有した場合をシミュレーションしました。ただし、正規分布では結果がマイナスになる可能性があるため、それをできるだけ避けるために初期値を6万円から始めました。これなら、よほど運の悪いことが続かない限り結果がマイナスになることはないでしょう。

ついでに、同じ条件で対数正規分布に従う乱数でもシミュレーションしてみました。

標準偏差の比較1年目5年目10年目15年目20年目
シミュレーション(正規分布)1.81846.336415.562633.491673.0832
シミュレーション(対数正規分布)1.97447.194419.694949.343691.6712
計算結果1.986.482114.763829.1211454.1553

うーん、計算結果は正規分布のシミュレーションに対しては近似しているといえばいえなくもない、けれど対数正規分布の近似にはちょっと遠い、という感じでしょうか。

ここでよくわかるのは、対数正規分布は正規分布以上に標準偏差、すなわちリスクが年を重ねるごとに大きくなっていく、ということです。一般に僕たちが思っている以上に、長期保有というのはリスクが大きくなるものなのかもしれません。

さて、ここでいったんまとめると、リスクの計算式に対する僕の考えはこうです。

n年間投資すると、リターンはn倍になるのに対してリスクは√n倍にしかなりません。という式は、長期保有のリスク計算式としてはものすごくおおざっぱな近似値を計算するための式でしかなさそうだ

というものです。では、どのような式が長期保有のリスク計算式として使えそうか、といえば、長期保有の値動きシミュレーションを公式化してみようのエントリのコメント欄でCOLEさんが説明してくれているのですが、これは高度すぎて実のところ僕の手には負えていません。

というわけで、長期保有のときのリスクを把握したい場合には僕にとってはシミュレーションが実は近道かもしれません。

さて。投資信託を長期保有したときにリターンとリスクがどうなるのか、についてシミュレーションと公式化の試行錯誤をずいぶんくりかえしてきましたが、そろそろいったん区切りをつける頃のように思います。

次のエントリでは、投資信託の値動きが対数正規分布に従うかどうかについて、いくつか書籍からの引用を紹介するつもりです。

このテーマの記事一覧
第1話:緊急調査:株式投資に複利効果はあるのか?
第2話:再考:株式投資に複利効果はあるのか?
第3話:改題:投資信託の長期投資は複利なのか?
第4話:追求:投資信託の長期投資は複利なのか?
第5話:さらに追求:投資信託の長期投資は複利なのか?
第6話:中間報告:投資信託の長期投資は複利なのか?
第7話:どうやって投資信託の値動きのシミュレーションをしたのか
第8話:長期保有の値動きシミュレーションを公式化してみよう
第9話:投資信託を長期保有したら複利になるのか、の参考文献
第10話:投資信託を長期保有したらどうなるか、20年分のシミュレーション
第11話:その投資信託のN年後のリスクを計算する方法(概算で)
第12話:続:その投資信託のN年後のリスクを計算する方法(概算で)
第13話:投資信託のリターンは対数正規分布に従うらしい、けど厳密には違うらしい
第14話:リスクがあるとき、複利はひとり勝ちを生む
第15話:TOPIXを20年保有したシミュレーション。元本割れの確率は?
第16話:高いリスクこそが破壊的な結果をもたらすのではないか
第17話:まとめ:長期保有のリスクとリターンについて分かったこと(前編)
第18話:まとめ:もしくは再検討の予告

[関連カテゴリ]
6.投資方法・ドルコスト平均法

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