2008年12月31日
まとめ:もしくは再検討の予告
本当はこのエントリはこれまでのまとめを箇条書きで書いていこうと思っていました。しかし、そうはなりませんでした。なぜかというと、前回のエントリのトラックバックで重要な指摘をいただいたので、あらためてこれまでの調査を再検討したくなったからです。
これまで正規分布もしくは対数正規分布の乱数を発生させてシミュレーションをし、それを基にいろいろな推測などを積み重ねてきました。前回のエントリにトラックバックしていただいたベムさんの記事には、こう書いてあります。
金融工学では証券価格自体が正規分布すると仮定しているのではなく、その変化率(連続複利ベースの収益率)が正規分布すると仮定しているためです。
(略)
変化率が正規分布するので、証券価格自体は対数正規分布になります。
この文章、どこかで見たことあるな? と思ったら、以前書いたエントリ「投資信託のリターンは対数正規分布に従うらしい、けど厳密には違うらしい」でいくつか引用していました。もう一度それを引用してみます。
例えば、証券アナリストの教科書的な書籍「証券投資論」の103ページには次のように書いてあります。
幾人かの先駆的研究によって、日次、週次、および月次の投資収益率は正規分布(normal distribution)によって近似できることが明らかにされている。
また、書籍「証券投資(上)」にはこう書いてあります。
個別の株式の収益率が正規分布するという仮定には理論的反対がある。それは、株価が負の値をとることがないことを考えると、正規分布が保有期間収益率を典型的に示す分布となり得ないというものである。
(略)
これに代替する仮定は、連続複利年率の収益率が正規分布するというものである。
(略)
短期の保有期間、つまりtが小さな値のとき、(数式略)正規分布は、対数正規分布の良い近似となる。
正直、この文章を以前のエントリで引用したときには、まだ深くその意味を把握していませんでした。しかし実は重要なポイントが2つあります。
1)正規分布(もしくは対数正規分布)するのは証券価格ではなくて変化率である。
2)ここでいう変化率は連続複利ベースの収益率である。
正直、僕がこれまで行ってきたシミュレーションはこの2つのポイントを満たしているか? と問われれば、満たしているかどうかの知識がまだない、という状態です。
果たして、これまでのシミュレーションは「変化率」が正規分布するように作っていたのか。そして「収益率は連続複利年率」であったのか。
トラックバックをいただいたベムさんのシミュレーションでは、これまでの僕のシミュレーションとは異なる結果がでているようです。ただ、その結果を読み解くにはそれはそれで上記のような知識が必要になります。僕は、あらためて上記のポイントを調査・勉強して自分のシミュレーションに反映してみたいと思います。
ですからこのエントリは、表題にもあるようにこれまでのまとめ、ではなくて再検討の予告なのです。
こうやって苦労しながらも少しずつ正しいのではないかと思える方向に向かっている、ブログを書きながら調べ物をするのは、大変だけれども自分一人で調べているだけでは絶対にたどり着けないようなところへ連れて行ってくれる面白さがありますね。
ただし、これまでのシリーズはいったんここでお休みにします。これからしばらくは、以前のように投資信託のあれこれの普通の話題に戻って、その間に頑張って調査、勉強して、またこの話題に戻ってこようと思います。
なんだかまるでどこかのヒーローものの最終回のようになってしましましたね。「これは終わりではない、始まりなのだ!」と。
このテーマの記事一覧
第1話:緊急調査:株式投資に複利効果はあるのか?
第2話:再考:株式投資に複利効果はあるのか?
第3話:改題:投資信託の長期投資は複利なのか?
第4話:追求:投資信託の長期投資は複利なのか?
第5話:さらに追求:投資信託の長期投資は複利なのか?
第6話:中間報告:投資信託の長期投資は複利なのか?
第7話:どうやって投資信託の値動きのシミュレーションをしたのか
第8話:長期保有の値動きシミュレーションを公式化してみよう
第9話:投資信託を長期保有したら複利になるのか、の参考文献
第10話:投資信託を長期保有したらどうなるか、20年分のシミュレーション
第11話:その投資信託のN年後のリスクを計算する方法(概算で)
第12話:続:その投資信託のN年後のリスクを計算する方法(概算で)
第13話:投資信託のリターンは対数正規分布に従うらしい、けど厳密には違うらしい
第14話:リスクがあるとき、複利はひとり勝ちを生む
第15話:TOPIXを20年保有したシミュレーション。元本割れの確率は?
第16話:高いリスクこそが破壊的な結果をもたらすのではないか
第17話:まとめ:長期保有のリスクとリターンについて分かったこと(前編)
第18話:まとめ:もしくは再検討の予告
[関連カテゴリ]
・ 6.投資方法・ドルコスト平均法
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≫次 : 手数料で儲ける金融商品の時代は終わった。これからは低コストの時代にしよう
≪前 : まとめ:長期保有のリスクとリターンについて分かったこと(前編)
長期投資中の身として、本シリーズをドキドキして読んでいました。再検討を期待しています!
読者さんとの共鳴でどんどん議論が深化していて、すごいですね!
今年もいろいろとよろしくお願いします
バリュー投資家的に考えると、どこかでフェアバリューに収斂してくれるはずと思ってます。
リターンリバーサルが起きるだろうが、それがいつかは分からないのでランダムウォークであるというあたりで。
初期値(原点)がPER80倍とかの日本バブル絶頂ですと20年くらい低迷しているのは現実にもありますが。
何を当たり前の事を延々と。
精読していないのですが、例えば10年間、平均で年率8%をクリアできる投資信託がありますか?あっても1つか2つ?円ベースでバフェットだって10%強。それだけマレって事ですよ。
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