2008年12月23日

TOPIXを20年保有したシミュレーション。元本割れの確率は?

これまで試行錯誤に使ってきたシミュレーションを用いて、今度はTOPIXを長期保有した場合のシミュレーションをしてみましょう。どれくらい増えそうなのか、そして元本割れの確率はどれほどのものでしょうか?

いままでシミュレーションでは、数字を大きくして違いがすぐ分かるようにと、架空の期待リターンとリスクを使ってきました。今回は、実際の投資信託の期待リターンとリスクを用いてシミュレーションをしてみることで、現実に投資信託を長期保有したときのリターンとリスクをみてみることにしましょう。

今回は典型的な投資信託として、TOPIXに連動するインデックス型の投資信託を想定してみます。TOPIXなら過去のデータから期待リターンとリスクがすでに求められているためです(今回は販売コストや運用コストは無視します)。

AaTOPIXのリターンとリスクは、厚生年金と国民年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人が発表しています。その数字はそのまま僕が作ったツール「アセットアロケーション分析 ~ 投資信託のガイド|ファンドの海」でも用いていますので、ここから数字を引っ張ってきましょう。

そうするとTOPIXの期待リターンは4.80%、リスクは22.15%です。毎年の値動きは対数正規分布に従うと想定してシミュレーションをしてみます。

いつものようにグラフをみてみましょう。まずは3000回シミュレーションしたうちの任意の256回分をグラフにしたもの。20年で10倍以上に増えているケースが散見されますね。

Simula61

そしてこれがばらつきを表したグラフです。20年目のグラフはだいたい0.7ぐらいにピークがあって、右方向になだらかに広がっている感じですね。

Simula62

3000回シミュレーションした結果、20年目の平均値は2.56、標準偏差は3.056でした。これが対数正規分布すると仮定すると、計算によって元本割れする確率(結果が1以下になる確率)、複利に追いつかない確率を次のExcel関数で計算することができます。

=lognormdist(値,平均,標準偏差)
(ただし平均と標準偏差は対数正規分布用に変換した値

その結果次のようなことが分かりました。

TOPIXを20年保有した場合:
元本割れする確率→29.9%
複利に追いつかない確率→68.0%

これは上記のばらつきを表したグラフを見てもなんとなく分かることだと思います。20年目のグラフをみても横軸1以下の部分がかなりの面積で残っているためです。

これがTOPIXに連動したインデックス型投資信託を20年保有したときのシミュレーションによる、リスクとリターンです。思ったよりも元本割れのリスクが大きいこと、複利で増えていく可能性が相当低いことは、僕にとっても大きな驚きです。というか20年保有して元本割れの確率30%なんて聞いてないよ! って感じです。どう思います?

しかし、別のシミュレーションも試したところ、もう少し希望が持てる結果を得ることができました。それについてはまた次回に。

今回シミュレーションに用いたExcelのワークシート(simulation-topix-20-lognorm.xls)を公開しておきます。

このテーマの記事一覧
第1話:緊急調査:株式投資に複利効果はあるのか?
第2話:再考:株式投資に複利効果はあるのか?
第3話:改題:投資信託の長期投資は複利なのか?
第4話:追求:投資信託の長期投資は複利なのか?
第5話:さらに追求:投資信託の長期投資は複利なのか?
第6話:中間報告:投資信託の長期投資は複利なのか?
第7話:どうやって投資信託の値動きのシミュレーションをしたのか
第8話:長期保有の値動きシミュレーションを公式化してみよう
第9話:投資信託を長期保有したら複利になるのか、の参考文献
第10話:投資信託を長期保有したらどうなるか、20年分のシミュレーション
第11話:その投資信託のN年後のリスクを計算する方法(概算で)
第12話:続:その投資信託のN年後のリスクを計算する方法(概算で)
第13話:投資信託のリターンは対数正規分布に従うらしい、けど厳密には違うらしい
第14話:リスクがあるとき、複利はひとり勝ちを生む
第15話:TOPIXを20年保有したシミュレーション。元本割れの確率は?
第16話:高いリスクこそが破壊的な結果をもたらすのではないか
第17話:まとめ:長期保有のリスクとリターンについて分かったこと(前編)
第18話:まとめ:もしくは再検討の予告

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hide (2008/12/23 22:45:45)

最近ですが勉強させていただいております。ありがとうございます。
私は統計はちんぷんかんぷんですが、今回取り上げている題材は非常に興味深いです。

ネットや本などでこの方向が正しいと思っていままでやってきたのですが、そうではないのでしょうか?
つづきをぜひお願いします。

ファンドの海管理人(イーノ) (2008/12/24 0:32:06)

hideさん、こんばんは。本に書いてあることがすべて正しいわけじゃないですよね。だからといって僕のブログだって間違ったことが書いてあるかもしれませんし。でも僕は「本に書いてあったからこうだ」という信じ方はしないで、自分で確かめるタイプの人なのです。ぜひhideさんも自分で調べてみると面白いですよ。

続きは書いてる途中です! 次の次が事実上の最終回、後日談を少し書くので、あと3本くらいで終わる予定です。お楽しみに!

やすとも (2008/12/24 0:47:21)

イーノさん、こんばんわ。
いよいよ最終回に近づいてきたみたいですね。

ただ、どうも今回のシミュレーションは、過去のデータからするとうまくシミュレーションできていないように思います。
元本割れする確率という点では、ダウ平均もTOPIXも似たような値を示していて、1年で30~40%、5年で20~30%、10年で10~20%、20年で10%を切るぐらいになっています。
https://www.joinvest.jp/multiget/visitor/home/seminars/pdf/ondemand0812122.pdf
(上記のデータも20年保有は評価期間短いので怪しいと思います)

次回のシミュレーションに期待してます。

ファンドの海管理人(イーノ) (2008/12/24 1:19:51)

やすともさん、こんばんは。いつもコメントありがとうございます。
シミュレーションでは現実よりちょっとリスクが高めになる傾向があるのかもしれないですね。原因はどこにあるのか分からないですが(元のリスク・リターンかもしれないし、シミュレーションに正規分布を選ぶべきだったのかもしれないし...)。教えて頂いた資料、ちょっとよく見てみます。
次回のシミュレーションは、いわゆる「オチ」に相当します。自分ではうまく「オチ」たなあという結果なのですが、読者の方からはどう思っていただけるか....お楽しみに!

やすとも (2008/12/24 1:44:53)

資料だけだと良くわからないかもしれません。
資料は下記で取り上げたものです。ジョインベスト証券のサイトに行くとビデオの解説が見れます。全部見ると45分もかかりますが。
http://valueasset.blog86.fc2.com/blog-entry-28.html

pineapple (2008/12/25 0:27:47)

複利に追いつかない可能性が高いのはある意味当然なんではないでしょうか? 年利4.8%で20年間確実に運用できる手段は存在しないでしょう。

逆に確定複利と五分五分になる利率はいくつになるでしょうか? もしその利率の円建て20年債権があるとしたら TOPIXのリスクには価値がないことになります。

次回期待してます。

LEOPARD (2008/12/25 1:49:09)

初めまして。よろしくお願いします。

いきなりですが、イーノさんのシュミレーションは市場全体には当てはまらないように思います。

なぜなら、
「どの企業も儲けを出すことに必死である」
からだと考えております。世界中のGDPの成長を見ていても、経済全体でみるとかなり強烈なプラス方向への力が働いているように思います。

むしろ、今回のシュミレーションは
【個別企業への投資をすればどうなるか?】
に近いような気がします。つまり、このシミュレーションはインデックス投資を否定するどころかむしろインデックス投資の優位性を示しているように思います。一つ一つの企業で見れば倒産したり業績が低迷する企業もありますが、それら全ての企業に投資すると当たり前ですが、常に市場平均(それも複利の)を得られると言う結果になると考えれないでしょうか?

よく株式投資は博打と言われますが、この結果を見てますますそう思います。但し、個別企業への投資に限ってですが。殆どの投資が複利を下回るんですから、そりゃ幾ら個別投資を行っても苦労ばっかりで利益が見合わないでしょう。
しかし、インデックス投資を行えば楽して平均を常にキープできるのです。

一回ごとのシミュレーション結果を一つ一つの市場と捉えれば、世界へのインデックス投資のシミュレーションになると思います。

ファンドの海管理人(イーノ) (2008/12/25 2:24:12)

pineappleさん、こんばんは。
>逆に確定複利と五分五分になる利率はいくつになるでしょうか?
明らかに4.8%を超えるはずです。なのでそんな確定利回りの債券は存在しません。だからこそ、リスクがある一方で期待リターンの高い株式投資(投資信託)に現在でも投資する価値があるのでしょうね。

LEOPARDさん、こんばんは、はじめまして。今回のシミュレーションはTOPIXという市場全体を代表するインデックスを対象に行っています。その基本的なところを誤解されているようです....。
ちなみに個別企業の株式のリスクはこの程度では済まないです。インデックス投資(もしくは大規模なポートフォリオ)だからこそ、20%程度のリスクで収まっているのです。次回書きますが、グローバルなインデックス投資でもリスクはこの程度ありますよ。

預金王 (2008/12/25 11:01:22)

インデックスは個別株に比べて変動は少ないですが、市場そのものが右肩下がりになると結局損をしてしまいますね^^;

国債はダメなどと某アクティブマネージャーは言ってましたが、ボロ負け(ベンチマークのパクリ)でも信託報酬だけはしっかりと奪われていきます。
ディフェンシブETFとか作れないのかな?

桑園日記 (2008/12/25 21:16:24)

こんにちはたびたび寄らせていただいています。
 イーノさんのシュミレーション結果、ものすごく興味深いです。イーノさんの言うように私が信じてきたインデックス投資に関する本や雑誌の言葉はナンだったのでしょうか? 長期保有における優位性はどこにあるのか分からなくなりました。目先の利益を血眼になって追いかけた方がいいのでしょうか。会社員の私にはそんな時間はありません。
 早く次回をお願いします。

LEOPARD (2008/12/26 0:25:38)

イーノさん こんばんわ。

私の説明が下手で申し訳なかったのですが、そもそもインデックスとは何か?という事を考えると、ある市場に上場している銘柄の平均値な訳ですよね。TOPIXという会社は存在しないわけで。

で、「TOPIXの期待リターンは4.80%、リスクは22.15%」であるならば、それはすなわち、TOPIXを構成している銘柄を全て平均すればそのような期待リターンとリスクになると言うわけです。当然、それらを元にシミュレーションを行えば、この一連の記事のような事になるのでしょう。別におかしくないと思います。逆に、TOPIXのシミュレーションから期待リターンとリスクを求めれば、それぞれおおよそ4.8%と22.15%になるのではないでしょうか?

繰り返しますが、このシミュレーション結果はインデックス投資の否定ではなく、効率市場主義を信じるなら、インデックス投資が最も優れた投資手法である事の証明だと思います。
(現実の市場を見ても、時価総額の大部分は全体から見ればごく一部の銘柄に偏っていますよね。TOPIXCore30だけで時価総額の約35%を占めていますが、TOPIX Smallは1210社集まって約9%に過ぎません。1200社集まっても上位30社には全く敵わないのです。これもシミュレーションの結果と一致するのでは無いでしょうか?)
http://www.tse.or.jp/market/topix/data/value_data/jikaso0811.pdf

ファンドの海管理人(イーノ) (2008/12/26 1:13:24)

LEOPARDさん、こんばんは。前回のコメントで、
>シュミレーションは市場全体には当てはまらないように思います。
>今回のシュミレーションは【個別企業への投資をすればどうなるか?】に近いような気がします

とのご指摘だったので、今回はそもそも市場全体であるTOPIXの数字を基にしたシミュレーションだったという指摘をさせていただきました。

僕もこのシミュレーションでインデックスを否定するつもりはなくて、よくいわれているような「長期投資なら複利で増える」ということをシミュレーションで確認したら、そんなにうまくいくものではないことが分かった、という点を提示したつもりです。

これはTOPIXが悪いわけではなくて、株だろうが市場だろうがリスクのある資産はすべてこうなるということなんですね。



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