2009年02月20日
連載:リスク資産の複利確率(5)~ 正規分布なシミュレーションの設計
ある金融資産を20年保有することをシミュレーションする、ということは、その金融資産の1年目の収益率、2年目の収益率……20年目の収益率と、毎年の収益率をシミュレーションすることにほかなりません。
そして、収益率は正規分布に従うことが分かっているため、正規分布の平均と標準偏差の値に金融商品の期待リターンとリスクを当てはめれば、収益率の確率分布を求めることができます。ということで以下に、期待リターン10%、リスク30%の金融商品の収益率の確率分布のグラフを示します。
見れば分かるとおり、中央に位置する収益率10%が発生する確率がいちばん高くて、そこから外れた収益率が発生する確率、例えば半分になってしまうような-50%とか、2倍になる100%といった収益率が発生する確率は低い(でもゼロではない)ことがグラフから読み取れます。
これは現実でもそうですよね。大きく値上がりしたり、ものすごく値下がりする、ということはそう滅多にあることではありません。でも絶対に起きないわけではなくて、たまには起きるわけです。
この確率に合わせた数字を発生させて、それを1年目の収益率、2年目の収益率……20年目の収益率と当てはめていけば、金融商品を保有することのシミュレーションになりそうです。
さて、ExcelではNORMINVという関数を使うとこの正規分布に従った確率で乱数を発生させる式を簡単に作ることができます(参考:正規乱数・正規分布する乱数を発生させる ― インストラクターのネタ帳)。
NORMINV(RAND(),平均値,標準偏差)
平均値のところには期待リターン(10%=0.1)、標準偏差にはリスク(30%=0.3)を代入します。さっそく、この数式を使ってExcelのワークシート上で5000個ばかり収益率を発生させてみましょう。
ちなみに、Excelには平均を求める関数と標準偏差を求める関数もありましたね。
=AVERAGE()
=STDEV()
500個の収益率のデータを発生させると同時に、上記の関数を使ってそれらのデータの平均と標準偏差を求めてみました。
どうでしょう。誤差はもちろんありますが、おおむね平均0.1、標準偏差0.3、すなわち期待リターン10%、リスク30%の収益率に合った数値が発生できているようです。次回はこれを使ってシミュレーションしてみましょう。
この連載のバックナンバー
・ 早くも帰ってきた! 連載:リスク資産の複利確率(1)~ 連載の目的と前提
・ 連載:リスク資産の複利確率(2)~ 参考書に載っている計算式
・ 連載:リスク資産の複利確率(3)~ リターンとリスクのグラフ化
・ 連載:リスク資産の複利確率(4)~ 収益率が正規分布に従うということ
・ 連載:リスク資産の複利確率(5)~ 正規分布なシミュレーションの設計
・ 連載:リスク資産の複利確率(6)~ 正規分布なシミュレーションをExcelで実行
・ 連載:リスク資産の複利確率(7)~ 食い違う計算結果とシミュレーション結果の「謎」
・ 連載:リスク資産の複利確率(8)~ 謎を解くカギは「B方式」にあるらしい
・ 連載:リスク資産の複利確率(9)~収益率の変化をシミュレーションするという
・ 連載:リスク資産の複利確率(10)~どうして収益率を足しているのだろう?
・ 連載:リスク資産の複利確率(11)~連続複利とは? 無限に連続する複利の金利を求める
・ 連載:リスク資産の複利確率(12)~連続複利を計算してみた
・ 連載:リスク資産の複利確率(13)~連続複利の世界では掛け算が足し算になる!
・ 連載:リスク資産の複利確率(14)~ 収益率を連続複利だと想定したシミュレーション
・ 連載:リスク資産の複利確率(15)~ もういちどこの連載の目的を確認する
・ 連載:リスク資産の複利確率(16)~新たな考え方でシミュレーションを作ることにした
・ 連載:リスク資産の複利確率(17)~シミュレーションのために連続複利年率を求める
・ 連載:リスク資産の複利確率(18)~連続複利年率のリスクの求め方のはずが、どんでん返しに!
・ 連載:リスク資産の複利確率(19)~シミュレーションのための連続複利年率とリスクの求め方とは?
・ 連載:リスク資産の複利確率(20)~シミュレーションの作り直し3度目の正直
・ 連載:リスク資産の複利確率(21)~新しいシミュレーションを試してみる
・ 連載:リスク資産の複利確率(22)~最も重要な公式、N年後の確率分布を求める式を記す
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・ 連載:リスク資産の複利確率(27)~これが合理的なリスクの取り方ではないのか!
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[関連カテゴリ]
・ H.リスク資産の複利確率
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