2009年02月22日

連載:リスク資産の複利確率(6)~ 正規分布なシミュレーションをExcelで実行

期待リターンとリスクが分かれば、その金融商品の収益率をExcelで発生させることができます。今回はそれを使って、ある金融商品を20年保有するというシミュレーションをExcelで作り、実行してみます。

ようやくシミュレーションをするところまでこぎつけました。これで金融商品を長期で保有した時のリターンとリスク、そしてリターンが複利を超える確率がどれくらいなのか、について調べることができそうです。

シミュレーションをどう組み立てるのか、まずは考えてみます。金融商品の毎年の運用結果は、以下の方法で示すことができますよね。

1年目の運用結果:元本 ×「1 + 1年目の収益率」
2年目の運用結果:1年目の運用結果 ×「1 + 2年目の収益率」
3年目の運用結果:2年目の運用結果 ×「1 + 3年目の収益率」


20年目の運用結果:19年目の運用結果 ×「1 + 20年目の収益率」

つまりこうですね。

N年目の運用結果:(N-1年目の運用結果)× (1 + N年目の収益率)

さて、期待リターン10%、リスク30%の金融商品の収益率は、以下のExcelの関数でシミュレーションできるということが前回分かりました。

NORMINV(RAND(),10%,30%)

実際には10%のところには0.1、30%のところには0.3が入ります。

ということは、元本を1万円としたとき、N年目の運用結果をExcelでシミュレーションするには、次のようにセルに式を入れればいいはずです。

Cell_formula01

これを20年目まで右方向に繰り返せば、20年間のシミュレーションのできあがりです。さっそく入力して計算してみました。グラフも描いてみました。

Cell_result01_2

シミューレションによって求めたいのは、この金融商品を20年保有したときの平均のリターンとリスクです。そこでシミュレーションを5000回繰り返し、その平均のリターンとリスクを求めてみましょう。

まず、500回繰り返したシミュレーションのうち200回分の値動きを折れ線グラフにしてみました。このグラフで分かるとおり、儲かったりそうでなかったり、実にいろんな範囲の結果になる可能性があることが分かります。

Normdist500_01

結果のばらつき具合をもっとよく知るために、度数分布を折れ線グラフにしてみました。これを見ると、5年目、10年目、20年目と年を追うごとにばらつき具合が広がっていくのが分かりますね。

Normdist500_02

ではこのシミュレーションにおける20年目のリターンの平均とリスクを求めてみましょう。例によって、Excelの次の関数をシミュレーション結果に当てはめれば、20年目のリターン(平均)とリスク(標準偏差)を知ることができます。

=AVERAGE()
=STDEV()

するとどうでしょう。以下の結果になりました。

期待リターン10%、リスク30%の金融商品を20年保有した場合のリターンとリスク。
20年目のリターンの平均: 6.891
20年目のリスク:12.399

(モンテカルロ法による)

次回、この結果について考察します。

ちなみに、今回シミュレーションにつかったExcelファイルを公開しておきますね(normdist_01.xls)。そうそう、僕のExcelのバージョンが前回の連載からあがって、Excel 2007になったんですよ。グラフがきれいですよね。公開しているファイルは互換性を考慮してExcel 2003形式で保存してあります。

この連載のバックナンバー
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COLE (2009/02/28 8:27:58)

> 20年目のリターンの平均: 6.891
> 20年目のリスク:12.399
> (モンテカルロ法による)

なのにヒストグラムは3まで、ということは、実際のヒストグラムの半分も表示されていないということですね。
そして、恐らく次の連載のネタとしてご準備中だと思いますが、20年目で一番多いのが0.6の118ですし、中央値MEDIAN(V$3:V$5002)は3.09ということでどちらも平均値と大きく離れています。
ということは(次のネタバレになるでしょうからここまでにしておきます)

ファンドの海管理人(イーノ) (2009/02/28 13:31:47)

COLEさんこんにちは。はい、ネタバレ防止ありがとうございます。シミュレーションと、前述の計算となぜ違うのか? というのが次以降のテーマになります。
以前の連載では解き明かされなかった謎に迫ります:-)。



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