2009年03月 7日

連載:リスク資産の複利確率(10)~どうして収益率を足しているのだろう?

値動きのある金融資産を20年間保有したら複利でお金が増えるのか? を調べるためにシミュレーションをしてきました。そして、2つのシミュレーション方式があることが分かりました。

2つのシミュレーション方式とは、僕が金融資産の値動きをシミュレーションするために考えたA方式と、同じ目的でベムさんがシミュレーションに用いたB方式。それぞれのシミュレーション結果のグラフを前回「連載:リスク資産の複利確率(9)~収益率の変化をシミュレーションするという」で見比べました。

そして参考書に載っていた計算式によって得られたリターンとリスクの値と、それぞれのシミュレーション結果を比べてみると、次のようになりました。

・A方式は、リターンの結果は計算と一致するけれど、リスクは一致しない
・B方式は、リターンの結果は一致しないけれど、リスクの値は一致する
・A方式とB方式は、リターンもリスクも一致しない

さて、この2つのシミュレーション方式のどちらかが間違っているのでしょうか? それとも実はどちらも間違っている? それとも参考書が間違っているのでしょうか?

ここでは2つのシミュレーション方式の違いについて、詳しく見ていくことにしましょう。

例として、元本1万円のある金融資産が1年目に20%値上がりし、2年目に10%値下がりしたとします。これをA方式とB方式でそれぞれどうシミュレーションしたのか、以下に説明します。

■A方式
まずA方式から。A方式では、次のようにシミュレーションを組み立てます。

元本×(1年目の収益率+1)×(2年目の収益率+1)=2年目の金融商品の価格

例では1年目の収益率が20%、2年目の収益率は-10%ですから、次のようになります。

元本(1万円)×1.2×0.9=1.08

元本1万円が1年目で20%値上がりして1.2万円になり、2年目はそれが10%値下がりしたわけですので、1.2×0.9で結果1.08万円となりました。

■B方式
次はB方式。B方式では、次のようにシミュレーションを組み立てます。

0 + 1年目の収益率 + 2年目の収益率=最終的な収益率

例では1年目の収益率が20%、2年目の収益率は-10%ですから、次のようになります。

0 + 0.2 + (-0.1)= 0.1

この式は、プラスマイナス0から始まり、1年目で20%値上がりして、2年目で10%値下がりしたのだから、差し引き10%の上昇ということになりました。

でもそうすると、元本の1万円が差し引き10%上昇したということですから、この金融資産の価格は1.1万円になっていることになります。1.1万円?

ところがA方式で求められた金額は1.08万円だし、実際に20%値上がりして10%値下がりしたなら、1.08万円でなければおかしいですよね?

B方式で収益率を足し算しているのは変ではありませんか? それなのに、なぜ収益率を足し算しているのでしょうか? そしてなぜこの計算ではリスクの結果が参考書の結果と一致したのでしょうか?

B方式のシミュレーションを作成したベムさんの解説を読んでみましょう。ベムさんは、このシミュレーションの前提を次のように定義しています。

・ シミュレートするのは株価ないし投信の基準価額の推移ではなく、収益率の推移とすること。
・ 収益率は連続複利ベースとすること。

B方式はこの定義に従って設計されたものなのです。

1つ目の「収益率の推移とすること」は、なんとなく分かります。だからこそ、収益率0から始まり、1年目の収益率20%、2年目の収益率-10%をそのまま計算したのでしょう。

では2つ目の「収益率は連続複利ベースとすること」。これはどういう意味でしょう?

特にここででてくる「連続複利」とはなんでしょうか? これが分からないと、なぜB方式で収益率が足し算になっているかを理解できそうにありません。

というわけで、次回は「連続複利とは何か?」について考えてみたいと思います。そしてそれが理解できたら、再びこのB方式のシミュレーションの意味に戻って、なぜB方式は収益率の足し算だったのか、が分かるはずです。きっと。

この連載のバックナンバー
早くも帰ってきた! 連載:リスク資産の複利確率(1)~ 連載の目的と前提
連載:リスク資産の複利確率(2)~ 参考書に載っている計算式
連載:リスク資産の複利確率(3)~ リターンとリスクのグラフ化
連載:リスク資産の複利確率(4)~ 収益率が正規分布に従うということ
連載:リスク資産の複利確率(5)~ 正規分布なシミュレーションの設計
連載:リスク資産の複利確率(6)~ 正規分布なシミュレーションをExcelで実行
連載:リスク資産の複利確率(7)~ 食い違う計算結果とシミュレーション結果の「謎」
連載:リスク資産の複利確率(8)~ 謎を解くカギは「B方式」にあるらしい
連載:リスク資産の複利確率(9)~収益率の変化をシミュレーションするという
連載:リスク資産の複利確率(10)~どうして収益率を足しているのだろう?
連載:リスク資産の複利確率(11)~連続複利とは? 無限に連続する複利の金利を求める
連載:リスク資産の複利確率(12)~連続複利を計算してみた
連載:リスク資産の複利確率(13)~連続複利の世界では掛け算が足し算になる!
連載:リスク資産の複利確率(14)~ 収益率を連続複利だと想定したシミュレーション
連載:リスク資産の複利確率(15)~ もういちどこの連載の目的を確認する
連載:リスク資産の複利確率(16)~新たな考え方でシミュレーションを作ることにした
連載:リスク資産の複利確率(17)~シミュレーションのために連続複利年率を求める
連載:リスク資産の複利確率(18)~連続複利年率のリスクの求め方のはずが、どんでん返しに!
連載:リスク資産の複利確率(19)~シミュレーションのための連続複利年率とリスクの求め方とは?
連載:リスク資産の複利確率(20)~シミュレーションの作り直し3度目の正直
連載:リスク資産の複利確率(21)~新しいシミュレーションを試してみる
連載:リスク資産の複利確率(22)~最も重要な公式、N年後の確率分布を求める式を記す
連載:リスク資産の複利確率(23)~複利で増える可能性は明らかに半数未満である
連載:リスク資産の複利確率(24)~リスクは結果のバラつきだけでなく、やはり危険度を表している
連載:リスク資産の複利確率(25)~期待リターンに対して、これ以上とってはいけないというリスクの上限がある
連載:リスク資産の複利確率(26)~長期投資で儲かる確率が上昇するかどうかは、リスクの大きさがカギ
連載:リスク資産の複利確率(27)~これが合理的なリスクの取り方ではないのか!
連載:リスク資産の複利確率(28)~最終回「総集編」

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