2009年03月 3日

連載:リスク資産の複利確率(8)~ 謎を解くカギは「B方式」にあるらしい

参考書に沿って計算した結果とシミュレーションした結果を比べると、リスクの値に10倍もの違いが発生してしまいまうことが前回のエントリで明らかになりました。ところが、参考書通りのシミュレーション結果になった例が存在するのです。

それがベムさんのシミュレーションです。

僕が前回の連載で、さんざんああでもないこうでもないと数字をこねくり回して結論らしきものをまとめようとしていたとき、ベムさんがトラックバックしてきた記事は僕にとって衝撃でした。

ベムさんは僕の記事を基にしてシミュレーションを行い、その結果、(少なくともリスクの値については)きれいに参考書の計算結果と一致しているようにみえました。

僕はその結果を拝見し、すぐに僕の知らない事実がまだまだたくさんあることを悟り、「俺は戻ってくる!」との言葉を残して人里離れた山奥へ修行に出かけたのでした。そして野を走り滝に打たれて修行を重ね、ここに新しい仮説を打ち立てるべく戻ってきて、連載を再開したのです!

前回の記事「リスク資産の複利確率(7)~ 食い違う計算結果とシミュレーション結果」で、参考書の数式とシミュレーションの結果が食い違うという「謎」が登場しました。そしてここからの連載は「謎解き」に入ります。僕にとって、そのカギを握っていたのがベムさんのシミュレーションだったのです。

ということでここからは一緒に謎を解いていきましょう。たぶん、この連載が終わるのにあと10記事くらい続く気がしますが、気長にお付き合いください。

まずはここまで説明してきた僕のシミュレーションと、ベムさんのシミュレーションとの違いを結果から見てみることにしましょう。以後、前回までに僕が行ったシミュレーションの方法を「A方式」、ベムさんのシミュレーションの方法を「B方式」と呼ぶことにします。

期待リターン10%、リスク30%の金融商品の5年後のリターンとリスクを求めてみましょう。

まず、参考書に載っていた計算式で求めます。

リターン=5年複利=(1.1)^5 = 1.61
リスク= 0.3 × √5 = 0.671 = 67.1%

次に僕の方式「A方式」でシミュレーションしてみます。結果だけを紹介します。

リターン(平均)=1.611
リスク=1.05=105%

そしてベムさんの方式「B方式」でのシミュレーションです。これも結果だけを紹介しましょう。

リターン(平均)=0.512
リスク=0.672=67.2%

それぞれを比べてみると、リターンについては参考書とA方式は答えがほぼ一致します。一方でリスクについては参考書とB方式がほぼ一致します。そしてA方式とB方式の答えは一致しません。

A方式はこれまでの連載の中でシミュレーションの方法については丁寧に説明してきました。ではB方式のシミュレーションはどのような方式になっているのでしょうか? 次回詳しく見ていくことにしましょう。

今回シミュレーションに用いたExcelのシートを公開しておきます(normdist_02.xls)。A方式、B方式の2つのシートが含まれています。ご興味のある方は、先回りして内容を見てみてください。

この連載のバックナンバー
早くも帰ってきた! 連載:リスク資産の複利確率(1)~ 連載の目的と前提
連載:リスク資産の複利確率(2)~ 参考書に載っている計算式
連載:リスク資産の複利確率(3)~ リターンとリスクのグラフ化
連載:リスク資産の複利確率(4)~ 収益率が正規分布に従うということ
連載:リスク資産の複利確率(5)~ 正規分布なシミュレーションの設計
連載:リスク資産の複利確率(6)~ 正規分布なシミュレーションをExcelで実行
連載:リスク資産の複利確率(7)~ 食い違う計算結果とシミュレーション結果の「謎」
連載:リスク資産の複利確率(8)~ 謎を解くカギは「B方式」にあるらしい
連載:リスク資産の複利確率(9)~収益率の変化をシミュレーションするという
連載:リスク資産の複利確率(10)~どうして収益率を足しているのだろう?
連載:リスク資産の複利確率(11)~連続複利とは? 無限に連続する複利の金利を求める
連載:リスク資産の複利確率(12)~連続複利を計算してみた
連載:リスク資産の複利確率(13)~連続複利の世界では掛け算が足し算になる!
連載:リスク資産の複利確率(14)~ 収益率を連続複利だと想定したシミュレーション
連載:リスク資産の複利確率(15)~ もういちどこの連載の目的を確認する
連載:リスク資産の複利確率(16)~新たな考え方でシミュレーションを作ることにした
連載:リスク資産の複利確率(17)~シミュレーションのために連続複利年率を求める
連載:リスク資産の複利確率(18)~連続複利年率のリスクの求め方のはずが、どんでん返しに!
連載:リスク資産の複利確率(19)~シミュレーションのための連続複利年率とリスクの求め方とは?
連載:リスク資産の複利確率(20)~シミュレーションの作り直し3度目の正直
連載:リスク資産の複利確率(21)~新しいシミュレーションを試してみる
連載:リスク資産の複利確率(22)~最も重要な公式、N年後の確率分布を求める式を記す
連載:リスク資産の複利確率(23)~複利で増える可能性は明らかに半数未満である
連載:リスク資産の複利確率(24)~リスクは結果のバラつきだけでなく、やはり危険度を表している
連載:リスク資産の複利確率(25)~期待リターンに対して、これ以上とってはいけないというリスクの上限がある
連載:リスク資産の複利確率(26)~長期投資で儲かる確率が上昇するかどうかは、リスクの大きさがカギ
連載:リスク資産の複利確率(27)~これが合理的なリスクの取り方ではないのか!
連載:リスク資産の複利確率(28)~最終回「総集編」

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COLE (2009/03/03 9:01:25)

ネタバレ避けのために脱線です。
ご覧になられている参考書の世間での評価はどれ位なのでしょうか?
つまり、例えばFPの試験を受けたときに、このようなリスクとリターンを求めよ、という問題が出たとして、この参考書の通りに書くと間違いになるのか、それとも、この参考書の通りに`書かないと'間違いになるのか?
確か以前ご覧になられた山崎元さんの本も同じ式でしたよね。

ファンドの海管理人(イーノ) (2009/03/03 12:11:16)

COLEさんどうもです。
参考書、出版元は「きんざい」(金融財政事情研究会)という金融系の専門出版社みたいなのでたぶんしっかりしているところではないかと思うんですよね。
FPの試験でどうなっているかは僕も知りたいところですね。こんど立ち読みでもして調べてみようと思います! あるいはFP系の読者の方でもしご存じの方がいらっしゃったら教えてください。

staygold (2009/03/03 23:53:03)

こんばんは。
本題と関係ありませんが。
金融財政事情研究会は、FP技能士試験を行っているところですよ。
http://www.kinzai.or.jp/ginou/indexfp.html

FPの試験では、債券の様に金利が確定しているもののリターン計算、あるいは外貨預金の運用結果からの利回り計算などはありますが。
不確実性の高い金融商品のリターン・リスクの計算は出ないです。※上記と違って、確実な答えが存在しないからだと思います。
少なくともFP技能士2級・3級では。

COLE (2009/03/04 8:13:33)

staygoldさん、ありがとうございます。
「1年間保有した場合のリターンの期待値が5%、標準偏差が10%であると`仮定した'場合、2年間保有した場合の標準偏差はどれくらいか?」であれば確実な答えが存在しますけどね。
株式のリスクやリターンがざっくりでも構わないので分からないと、プランニングも出来ないと思うのですが。まさか「リスク資産の動きは皆目見当もつかないので、預金と債券だけにしましょう」とでも言うのでしょうかね。



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