2009年03月 5日
連載:リスク資産の複利確率(9)~収益率の変化をシミュレーションするという
いままで僕が考えてきた金融商品の値動きのシミュレーションとは別の方式があることを前回紹介しました。そしてその方式でシミュレーションした結果、リスクの値が参考書の結果とほぼ一致したのです。おお!
今回はそのシミュレーション方式、前回の記事で「B方式」と名付けた方式の詳細について見ていくことにしましょう。
僕がこれまで考えてきたシミュレーション方式、「A方式」では、元本を1万円として、それに毎年収益率を掛けることで、値動きをシミュレーションしてきました。グラフにするとこんな感じです。
期待リターン10%、リスクが30%の場合、5年間でだいたい5000円から2万5000円あたりの価格になることが多い、といった感じの価格の分布になることが分かります。まあ、たまにすごく儲かったり、すごく損したりすることがあることも分かりますね。
しかしB方式では値動きをシミュレーションするのではなく、収益率の変化をシミュレーションしています。グラフをみるとその意味が分かるでしょう。
収益率がプラスマイナスゼロから始まり、5年間でだいたい-0.5(-50%)から1.5(150%)あたりの収益率になることが多い、といった収益率の分布になることが分かります。
このように、A方式とB方式では、それぞれ価格の変動、収益率の変動という異なるものをシミュレーションしていることが分かると思います。
それにしてもなんとなく気になるのは、両方のグラフの形の違いです。上のグラフはどんどん値段が発散しているように見えますよね? 一方で下のグラフは徐々に一定の幅に収束しようとしているように見えませんか? 値段が発散するなら収益率も発散しそうだし、収益率が収束しようとしているなら値段もそれほど発散しないような気がするのですが、どうなんでしょう。
次回、もう少し詳しくA方式とB方式について違いをみていくことにしましょう。
A方式、B方式の両方でシミュレーションを行ったExcelのシートを公開します(normdist_02.xls)。前回公開したものと同じです。
この連載のバックナンバー
・ 早くも帰ってきた! 連載:リスク資産の複利確率(1)~ 連載の目的と前提
・ 連載:リスク資産の複利確率(2)~ 参考書に載っている計算式
・ 連載:リスク資産の複利確率(3)~ リターンとリスクのグラフ化
・ 連載:リスク資産の複利確率(4)~ 収益率が正規分布に従うということ
・ 連載:リスク資産の複利確率(5)~ 正規分布なシミュレーションの設計
・ 連載:リスク資産の複利確率(6)~ 正規分布なシミュレーションをExcelで実行
・ 連載:リスク資産の複利確率(7)~ 食い違う計算結果とシミュレーション結果の「謎」
・ 連載:リスク資産の複利確率(8)~ 謎を解くカギは「B方式」にあるらしい
・ 連載:リスク資産の複利確率(9)~収益率の変化をシミュレーションするという
・ 連載:リスク資産の複利確率(10)~どうして収益率を足しているのだろう?
・ 連載:リスク資産の複利確率(11)~連続複利とは? 無限に連続する複利の金利を求める
・ 連載:リスク資産の複利確率(12)~連続複利を計算してみた
・ 連載:リスク資産の複利確率(13)~連続複利の世界では掛け算が足し算になる!
・ 連載:リスク資産の複利確率(14)~ 収益率を連続複利だと想定したシミュレーション
・ 連載:リスク資産の複利確率(15)~ もういちどこの連載の目的を確認する
・ 連載:リスク資産の複利確率(16)~新たな考え方でシミュレーションを作ることにした
・ 連載:リスク資産の複利確率(17)~シミュレーションのために連続複利年率を求める
・ 連載:リスク資産の複利確率(18)~連続複利年率のリスクの求め方のはずが、どんでん返しに!
・ 連載:リスク資産の複利確率(19)~シミュレーションのための連続複利年率とリスクの求め方とは?
・ 連載:リスク資産の複利確率(20)~シミュレーションの作り直し3度目の正直
・ 連載:リスク資産の複利確率(21)~新しいシミュレーションを試してみる
・ 連載:リスク資産の複利確率(22)~最も重要な公式、N年後の確率分布を求める式を記す
・ 連載:リスク資産の複利確率(23)~複利で増える可能性は明らかに半数未満である
・ 連載:リスク資産の複利確率(24)~リスクは結果のバラつきだけでなく、やはり危険度を表している
・ 連載:リスク資産の複利確率(25)~期待リターンに対して、これ以上とってはいけないというリスクの上限がある
・ 連載:リスク資産の複利確率(26)~長期投資で儲かる確率が上昇するかどうかは、リスクの大きさがカギ
・ 連載:リスク資産の複利確率(27)~これが合理的なリスクの取り方ではないのか!
・ 連載:リスク資産の複利確率(28)~最終回「総集編」
[関連カテゴリ]
・ H.リスク資産の複利確率
[広告]
≫次 : 連載:リスク資産の複利確率(10)~どうして収益率を足しているのだろう?
≪前 : 連載:リスク資産の複利確率(8)~ 謎を解くカギは「B方式」にあるらしい
COLE (2009/03/06 8:18:22)
A方式のグラフの縦軸を対数軸にすると、B方式のグラフに似てきますよ。
それからアップされているExcelファイルのBシートのヒストグラムがAシートのものになっています。
ファンドの海管理人(イーノ) (2009/03/06 22:16:34)
COLEさん、こんにちは。たしかにそうかもしれません。数式的にもそうかもですね。
シートの指摘ありがとうございます、修正して入れ替えます。
[トラックバックURL]