2009年04月26日
連載:リスク資産の複利確率(15)~ もういちどこの連載の目的を確認する
リスクのある金融商品を長期で保有したとき、本当にその金融商品は複利で増えてくれるのか? リスクがあるのだから、すごく増える可能性もあれば、全然増えない可能性もあるけれど、複利で増えてくれる可能性はどれくらいなのだろう? 半分くらいの可能性、つまり確率は5割以上なのかどうか? これがこの連載で答えを探している疑問です。
例えば、外国株式の期待リターンは過去の統計から計算すると約5%、リスクは20%だといわれています。ということは、これを20年保有していたら、どうなるでしょう? もちろんリスクのある金融商品ですから、すごく悪い結果に終わるかもしれないし、すごくいい結果に終わる可能性もある。
でも、統計的にみて、期待リターンが5%でリスクが20%の金融商品を20年保有したとき、20回複利である62.88%増を上回る可能性はどれくらいあるのでしょう? もしもリスクのある金融商品では、複利を上回る確率が5割以下だったり、もっと低いものなのだとしたら、わざわざ高いリスクの金融商品を保有している意義はあるのでしょうか? それよりも、期待リターンは低くてもいいから、もっと確実な金融商品を保有している方が有利では?
できれば、リターンとリスクを基にすると、長期ではどれくらいの確率で、どれくらいお金が増えるのか、という確率が計算できたらいいなあ、と思っているわけです。
もちろん1年先のことならいろんな本に計算方法が載っています。じゃあ20年先は? どの本にも載っていないのです。でも長期投資家なら1年先のことよりも20年先のことが大事。それを調べるのがこの連載の目的です。
でも外国株式の期待リターンなんて毎年変わるから、ずっと同じ期待リターンでこの先計算しても意味ないんじゃない? という意見もあると思います。ですよね?
でも、リバランスすればいじゃないですか。毎年リバランスしていけば、ずっと期待リターン5%、リスク20%というポートフォリオを維持することはできるんですね。ポートフォリオの中身は変わるでしょう。でも、統計上ずっと同じ期待リターンとリスクを維持しつづけることはできる。
そしてそれは上手な資産運用だと言われているわけです。ちゃんとリバランスして自分にあったリスクとリターンを引き受けているわけですから。
時々リバランスして、自分にあったリスクとリターンを維持しましょう、というのは僕がいってるんじゃなくて、本にも書いてあるし、僕が信頼する人たちも言っているわけです。
・自分にあったリスクをとる
・それをリバランスで維持しよう
本当にやるかどうかは別にして、これらは資産運用の大事なテクニックだと。
でも、その結果どうなるのか? まじめに何年もそれをやったらどれだけの確率で報われるのですか? だれも一定のリターンとリスクを長期で維持し続けたときの最終期待リターンと最終リスクを教えてくれない。本にも書いていない。
というわけで、僕はいま、この長い長い連載でそれを調べています。それは将来を予測するためでもなく、株価を予想するのでもなく、単純に数学的に、一定の期待リターンとリスクを持つ金融商品を長期保有したときの、最終期待リターンとリスクを追い求めています。
というわけで、ついに次回から連載も佳境に入る予定です!
この連載のバックナンバー
・ 早くも帰ってきた! 連載:リスク資産の複利確率(1)~ 連載の目的と前提
・ 連載:リスク資産の複利確率(2)~ 参考書に載っている計算式
・ 連載:リスク資産の複利確率(3)~ リターンとリスクのグラフ化
・ 連載:リスク資産の複利確率(4)~ 収益率が正規分布に従うということ
・ 連載:リスク資産の複利確率(5)~ 正規分布なシミュレーションの設計
・ 連載:リスク資産の複利確率(6)~ 正規分布なシミュレーションをExcelで実行
・ 連載:リスク資産の複利確率(7)~ 食い違う計算結果とシミュレーション結果の「謎」
・ 連載:リスク資産の複利確率(8)~ 謎を解くカギは「B方式」にあるらしい
・ 連載:リスク資産の複利確率(9)~収益率の変化をシミュレーションするという
・ 連載:リスク資産の複利確率(10)~どうして収益率を足しているのだろう?
・ 連載:リスク資産の複利確率(11)~連続複利とは? 無限に連続する複利の金利を求める
・ 連載:リスク資産の複利確率(12)~連続複利を計算してみた
・ 連載:リスク資産の複利確率(13)~連続複利の世界では掛け算が足し算になる!
・ 連載:リスク資産の複利確率(14)~ 収益率を連続複利だと想定したシミュレーション
・ 連載:リスク資産の複利確率(15)~ もういちどこの連載の目的を確認する
・ 連載:リスク資産の複利確率(16)~新たな考え方でシミュレーションを作ることにした
・ 連載:リスク資産の複利確率(17)~シミュレーションのために連続複利年率を求める
・ 連載:リスク資産の複利確率(18)~連続複利年率のリスクの求め方のはずが、どんでん返しに!
・ 連載:リスク資産の複利確率(19)~シミュレーションのための連続複利年率とリスクの求め方とは?
・ 連載:リスク資産の複利確率(20)~シミュレーションの作り直し3度目の正直
・ 連載:リスク資産の複利確率(21)~新しいシミュレーションを試してみる
・ 連載:リスク資産の複利確率(22)~最も重要な公式、N年後の確率分布を求める式を記す
・ 連載:リスク資産の複利確率(23)~複利で増える可能性は明らかに半数未満である
・ 連載:リスク資産の複利確率(24)~リスクは結果のバラつきだけでなく、やはり危険度を表している
・ 連載:リスク資産の複利確率(25)~期待リターンに対して、これ以上とってはいけないというリスクの上限がある
・ 連載:リスク資産の複利確率(26)~長期投資で儲かる確率が上昇するかどうかは、リスクの大きさがカギ
・ 連載:リスク資産の複利確率(27)~これが合理的なリスクの取り方ではないのか!
・ 連載:リスク資産の複利確率(28)~最終回「総集編」
[関連カテゴリ]
・ H.リスク資産の複利確率
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