2009年05月 8日

連載:リスク資産の複利確率(17)~シミュレーションのために連続複利年率を求める

「収益率が正規分布する」という考え方をやめて、新たに「連続複利年率の収益率が正規分布する」ことを前提にしてシミュレーションを組み立ててみることにします。どうすればいいでしょう?

まず、収益率が正規分布するということを前提にして、金融商品の複数年の値動きをシミュレーションするとどうだったかというと、こんな感じの数式で表していました。

元本×(1+1年目の収益率)×(1+2年目の収益率)……×(1+N年目の収益率)

1を足しているのは、収益率が5%だとしたら、元本に105%を掛けなければいけないので100%分を足しているわけです。

で、「収益率が正規分布する」とは、この赤い文字の「1年目の収益率」とか「2年目の収益率」というのが正規分布していたわけです。

では、これが「連続複利年率の収益率が正規分布する」ことを前提にしたシミュレーションはどうなるでしょう?

こんどは「1年目の収益率」や「2年目の収益率」や「N年目の収益率」は正規分布しません。これらの連続複利年率の収益率が正規分布するのです。

連続複利年率の収益率が正規分布するのですから、まずは「1年目の収益率」の連続複利年率を求めなければなりません。そして、それが正規分布すると考えるのです。連続複利年率の求め方は、以前の記事「連載:リスク資産の複利確率(12)~連続複利を計算してみた」で説明しました。繰り返しましょう。

ある年の収益率をRとすると、以下の式が成り立ちます。

連続複利年率r = log(1+収益率R)

「連続複利年率の収益率が正規分布する」ということは、このrが正規分布すると考えればいいはずです。

上記の式を変形すると、次のような式になります。eとは、ネイピア数とも呼ばれる特殊な数で、2.71828……と小数点以下が無限に続く無理数です。

1+収益率R = e連続複利年率r

てことは、こうなりますよね。

1+ある年の収益率R = eある年の収益率の連続複利年率r

これを基に毎年の金融商品の値動きをシミュレーションするとすれば、こうなるでしょう。

元本×e1年目の収益率の連続複利年率r×e2年目の収益率の連続複利年率r×e3年目の収益率の連続複利年率r……×eN年目の収益率の連続複利年率r

連続複利年率が正規分布する、ということは、この赤字にした「1年目の収益率の連続複利年率r」や「2年目の収益率の連続複利年率r」「N年目の収益率の連続複利年率r」が正規分布する、ということなのです。よね。

ところで。正規分布するということは、平均(期待リターン)と標準偏差(リスク)が必要です。この場合、平均は連続複利年率rを用いるとします。では、標準偏差はどんな値を用いればいいのでしょう?

収益率Rを基にして、その連続複利年率rを求める式はどの参考書にも載っています。それに沿ってここまで計算してきました。では、連続複利年率rが正規分布するとしたとき、リスクの値はどうやって求めればいいでしょう? ちょっと長くなったのでここで今回は一区切りにして、次回は連続複利年率のリスクの求め方について。

■お知らせ

このファンドの海が参加しているブログネットワーク「アジャイルメディア・ネットワーク」では、読者アンケートを実施中です。よろしければ、アンケート画面からあなたがどんな人か、教えてもらえないでしょうか。アンケート結果はアジャイルメディア・ネットワークから公開される予定です。

この連載のバックナンバー
早くも帰ってきた! 連載:リスク資産の複利確率(1)~ 連載の目的と前提
連載:リスク資産の複利確率(2)~ 参考書に載っている計算式
連載:リスク資産の複利確率(3)~ リターンとリスクのグラフ化
連載:リスク資産の複利確率(4)~ 収益率が正規分布に従うということ
連載:リスク資産の複利確率(5)~ 正規分布なシミュレーションの設計
連載:リスク資産の複利確率(6)~ 正規分布なシミュレーションをExcelで実行
連載:リスク資産の複利確率(7)~ 食い違う計算結果とシミュレーション結果の「謎」
連載:リスク資産の複利確率(8)~ 謎を解くカギは「B方式」にあるらしい
連載:リスク資産の複利確率(9)~収益率の変化をシミュレーションするという
連載:リスク資産の複利確率(10)~どうして収益率を足しているのだろう?
連載:リスク資産の複利確率(11)~連続複利とは? 無限に連続する複利の金利を求める
連載:リスク資産の複利確率(12)~連続複利を計算してみた
連載:リスク資産の複利確率(13)~連続複利の世界では掛け算が足し算になる!
連載:リスク資産の複利確率(14)~ 収益率を連続複利だと想定したシミュレーション
連載:リスク資産の複利確率(15)~ もういちどこの連載の目的を確認する
連載:リスク資産の複利確率(16)~新たな考え方でシミュレーションを作ることにした
連載:リスク資産の複利確率(17)~シミュレーションのために連続複利年率を求める
連載:リスク資産の複利確率(18)~連続複利年率のリスクの求め方のはずが、どんでん返しに!
連載:リスク資産の複利確率(19)~シミュレーションのための連続複利年率とリスクの求め方とは?
連載:リスク資産の複利確率(20)~シミュレーションの作り直し3度目の正直
連載:リスク資産の複利確率(21)~新しいシミュレーションを試してみる
連載:リスク資産の複利確率(22)~最も重要な公式、N年後の確率分布を求める式を記す
連載:リスク資産の複利確率(23)~複利で増える可能性は明らかに半数未満である
連載:リスク資産の複利確率(24)~リスクは結果のバラつきだけでなく、やはり危険度を表している
連載:リスク資産の複利確率(25)~期待リターンに対して、これ以上とってはいけないというリスクの上限がある
連載:リスク資産の複利確率(26)~長期投資で儲かる確率が上昇するかどうかは、リスクの大きさがカギ
連載:リスク資産の複利確率(27)~これが合理的なリスクの取り方ではないのか!
連載:リスク資産の複利確率(28)~最終回「総集編」

[関連カテゴリ]
H.リスク資産の複利確率

[広告]

[ブックマーク]  Yahoo!ブックマークに登録

≫次 : 連載:リスク資産の複利確率(18)~連続複利年率のリスクの求め方のはずが、どんでん返しに!
≪前 : 連載:リスク資産の複利確率(16)~新たな考え方でシミュレーションを作ることにした



[トラックバックURL]