2009年05月31日

連載:リスク資産の複利確率(20)~シミュレーションの作り直し3度目の正直

金融商品を長期保有するとリターンとリスクはどうなるのか? シミュレーションを作ってはああでもない、こうでもないとやり直してきました。少しアタマを整理してこれまでの失敗を生かし、かつ発見を組み入れたシミュレーションを組み直してみましょう。

まず、期待リターンが5%、リスクが30%の金融商品を想定しましょう。外国株式などはちょうどこれくらいの期待リターンとリスクにあてはまります。

次に、この金融商品を長期保有した場合の1年目の利回りをR1、2年目の利回りR2、3年目の利回りをR3……とします。すると、元本を基にした金融商品の価格の変化は次のように表現できますよね。

価格の変化=元本×(1+R1)×(1+R2)×(1+R3)……×(1+Rn)

例えば、1年目の利回りは5%でした、2年目は下がって-10%でした、といった場合は、1年目は元本に105%を掛けるし、2年目はそれに90%を掛けるわけです(だから1を足しています)。

さて、これを連続複利を使って表現してみましょう。1年目の連続複利年率をr1、2年目の連続複利年率をr2、3年目の連続複利年率をr3……としましょう。年の収益率と連続複利年率には次の関係がありました(参考:リスク資産の複利確率(13)~連続複利の世界では掛け算が足し算になる!)。

1+収益率R = e連続複利年率r

ですから、次のように表現できるはずです。

価格の変化=元本×er1×er2×er3……×ern

シミュレーションの前提として考えていたのは「連続複利年率の収益率が正規分布する」のですから、r1が正規分布する、r2も正規分布する、r3も正規分布する……、というようなシミュレーションを作らなければならないわけです。

そして、この金融商品は1年間の期待リターンが5%、リスクが30%ですから、次が成り立ちますよね。

(1+R1)は期待リターン105%、リスク30%。だから、er1も期待リターン105%、リスク30%のはずです。

(1+R2)は期待リターン105%、リスク30%。だから、er2も期待リターン105%、リスク30%のはずです。

(1+R3)は期待リターン105%、リスク30%。だから、er3も期待リターン105%、リスク30%のはずです。

……

ということは、e正規分布は対数正規分布になりますが、それを正規分布のデータとして分析したときに期待リターンが105%、リスク30%となるような対数正規分布の平均と標準偏差、を求めなければならないわけです。

e正規分布

は、数式で書くと

eN(平均μ,標準偏差σ)

となります。これをExcelの式で表すとこうなります。

exp(norminv(rand(),平均μ,標準偏差σ))…(式A)

exp()はネイピア数eのべき乗を表し、norminvは正規分布を生成してくれる関数です。そして、上記には乱数を生成するrand()関数が含まれています。

例えば上記の式を1万回実行すると、乱数によっていろんな値が生成されます。その値の平均を求めると105%、標準偏差を求とると30%となるような、平均μ、標準偏差σを求めたいのです。

ところで、上記のExcelの式Aは、以下の式に等しいことが分かっています。

loginv(rand(),平均μ,標準偏差σ))…(式B)

loginvは対数正規分布を生成してくれる関数です。僕は式Aと式Bが等しいことを数学的に式を展開して証明するほどのことができないのですが、言葉としては「正規分布をeのべき乗(exp)したのだから、それは対数正規分布(loginv)に等しくなるはず。だから両者は等しいはず」とはいえます。

また両者が等しいことは「Microsoft Excel を使った統計解析」のloginvの解説にも書いてあります。それに実際にExcelで上の2つの関数に同じパラメータを入れれば同じ結果が返ってくることで、実質的に同一であることは実験で調べることもできます。

というわけで、式Aと式Bが等しい前提で問いに戻りましょう。この平均μとσになにを与えると、(対数正規分布によって生成された値を正規分布として見たときに)平均105%、標準偏差30%となるデータが生成されるでしょうか?

実はこのパラメータの求め方については、僕の過去の記事「どうやって投資信託の値動きのシミュレーションをしたのか」でこの問いに答えています。

求めたい値を平均μ、標準偏差σとし、結果として得たい平均をm(今回は105%)、標準偏差をs(今回は30%)とすると、以下の式で平均μと標準偏差σを求めることができます。

平均μ = LN(m)-LN((s/m)^2+1)/2
標準偏差σ = SQRT(LN((s/m)^2+1))

上記は式をExcelの関数で表しているので、LNはlogeのこと、SQRTは√のことです。

この式で求めた平均μと標準偏差σを以下のExcelで対数正規分布を表す式にいれて何回も実行すれば、その結果はばっちりと平均m、標準偏差sの結果が得られます。

loginv(rand(),平均μ,標準偏差σ))

次回、これを実際にシミュレーションして確かめてみるつもりです。

この連載のバックナンバー
早くも帰ってきた! 連載:リスク資産の複利確率(1)~ 連載の目的と前提
連載:リスク資産の複利確率(2)~ 参考書に載っている計算式
連載:リスク資産の複利確率(3)~ リターンとリスクのグラフ化
連載:リスク資産の複利確率(4)~ 収益率が正規分布に従うということ
連載:リスク資産の複利確率(5)~ 正規分布なシミュレーションの設計
連載:リスク資産の複利確率(6)~ 正規分布なシミュレーションをExcelで実行
連載:リスク資産の複利確率(7)~ 食い違う計算結果とシミュレーション結果の「謎」
連載:リスク資産の複利確率(8)~ 謎を解くカギは「B方式」にあるらしい
連載:リスク資産の複利確率(9)~収益率の変化をシミュレーションするという
連載:リスク資産の複利確率(10)~どうして収益率を足しているのだろう?
連載:リスク資産の複利確率(11)~連続複利とは? 無限に連続する複利の金利を求める
連載:リスク資産の複利確率(12)~連続複利を計算してみた
連載:リスク資産の複利確率(13)~連続複利の世界では掛け算が足し算になる!
連載:リスク資産の複利確率(14)~ 収益率を連続複利だと想定したシミュレーション
連載:リスク資産の複利確率(15)~ もういちどこの連載の目的を確認する
連載:リスク資産の複利確率(16)~新たな考え方でシミュレーションを作ることにした
連載:リスク資産の複利確率(17)~シミュレーションのために連続複利年率を求める
連載:リスク資産の複利確率(18)~連続複利年率のリスクの求め方のはずが、どんでん返しに!
連載:リスク資産の複利確率(19)~シミュレーションのための連続複利年率とリスクの求め方とは?
連載:リスク資産の複利確率(20)~シミュレーションの作り直し3度目の正直
連載:リスク資産の複利確率(21)~新しいシミュレーションを試してみる
連載:リスク資産の複利確率(22)~最も重要な公式、N年後の確率分布を求める式を記す
連載:リスク資産の複利確率(23)~複利で増える可能性は明らかに半数未満である
連載:リスク資産の複利確率(24)~リスクは結果のバラつきだけでなく、やはり危険度を表している
連載:リスク資産の複利確率(25)~期待リターンに対して、これ以上とってはいけないというリスクの上限がある
連載:リスク資産の複利確率(26)~長期投資で儲かる確率が上昇するかどうかは、リスクの大きさがカギ
連載:リスク資産の複利確率(27)~これが合理的なリスクの取り方ではないのか!
連載:リスク資産の複利確率(28)~最終回「総集編」

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