2010年02月27日

リスクが高まるとリターンを蝕んでいく

投資信託のようなリスクのある金融商品を長期で保有したとき、期待リターンどおりになる確率はどれくらいなのか? について以前えんえんと連載で書いてきました。僕にとってはこのテーマはまだまだ続いていて、いろいろ考えを深めるためにエクセルで試行錯誤しているうちに新しいグラフを作ることに成功しました。

まずは結論から。表題通り、リスクはリターンを蝕むということがよく分かるグラフができました。以前書いたブログ「連載:リスク資産の複利確率(24)~リスクは結果のバラつきだけでなく、やはり危険度を表している」でも書いたことですが、あのときのグラフより分かりやすいはず。

これは期待リターン5%、リスク10%の投資信託を20年保有したときのグラフ。青い線は期待リターンどおりに複利で増えていったときの線。7%複利で増えると20年後には2.65倍になります。

Probdist20_01


でも、2.65倍に増える確率はどのくらいなのでしょう? それを示したのが10年目、20年目に示した山の形になっている横棒グラフです。例えば10年目の横棒グラフには、だいたい1.5のあたりに山のピークがきています。つまり、10年後に1.5倍になる確率が一番高くなっているわけです。20年後の山のピークは2のあたりにあります。つまり、20年後に2倍になる確率がいちばん高いのです。

そのピークの位置を示しているのが緑色の「最頻値」の線です。つまり、期待リターン7%、リスク10%の投資信託を20年間保有し続けると、確率的にいちばん起こりそうなのは20年後に2倍になることなのです。期待リターン7%の20年複利である2.65になる確率は山の高さをみれば分かるとおり、それほど高くありません。

赤い線は中央値を表します。つまり、ここがちょうど確率50%を分ける線です。20年後の中央値は約2.5ですから、期待リターン7%、リスク10%の投資信託を保有していた場合、20年後には50%の確率で2.5倍以下のリターンで終わる(逆にいえば50%の確率で2.5倍以上になる)、といえます。

どうですか? 「投資信託は長期保有すれば期待リターンの複利が期待できる」とよく説明されますが、確率的にはそうならないことが分かると思います。

さて。いま見たのは期待リターン7%、リスク10%のグラフでした。では、期待リターン7%でリスク20%のグラフを見てみましょう!

Probdist20_02


期待リターンは7%のままなので、20年後は7%の20年複利である2.65倍になってほしいと期待するわけですが、リスクが高まっているのでそうは問屋がおろしません。緑色の線をみてください。いいですか? 20年後の最頻値は0.91です!

そうです。期待リターン7%、リスク20%の投資信託を保有していた場合、20年後にもっとも起こりそうなのは元本割れすることなんです!

期待リターンが同じでも、リスクが高ければ結果が異なる可能性が高い。考えてみれば当たり前ですが、それがこのグラフではっきりお分かりいただけると思います。

今回用いたエクセルのシートを公開しておきます(probablity_distribution_of_20years.xls)。ただ、凝ったグラフを作るためにエクセル2007の機能を駆使したので、もしかしたらExcel 2003以前のバージョンだとうまく見られないかもしれません(エクセル2007しか持ってないので試せないのです)。

どのように計算しているかは、以前のえんえんと連載で書いてきた内容をご覧ください。また少し、こうしたネタを続けるつもりです。

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のら (2010/02/28 0:45:40)

リスクが高い場合、期間が長くなるほどリターンは大きく異なるというのは当たり前と言えば当たり前ですが、こうして試算結果を見るとなかなか、興味深い、というか怖い結果になりましたね。

以前のエントリでどなたかほかの方も書いていらっしゃったかと思いますが、投資の時期を1回にせず、何回かに分けるとどうなるか、という資産を是非見てみたいと思います。多分大して変わらないだろうなぁ、というのは何となく想像がつくのですが(;´∀`)

ファンドの海管理人(イーノ) (2010/02/28 12:46:16)

のらさん、こんにちは。リスクが高まって怖いのは、リターンが大きくなる確率よりも小さくなる確率の方がより高まっていくところですよね。
投資を何回かに分けるのは計算が大変そうなので試していませんが、想像では上記のグラフをずらしながら重ねていったものになるような気がします。エクセルのシートは公開しているので、どなたか試していただければ。

ぱお (2010/02/28 16:34:15)

期待リターン7%、リスク10%のグラフですが20年後の中央値は本文記載の2じゃなくて2.5じゃないでしょうか?

ファンドの海管理人(イーノ) (2010/02/28 20:11:31)

ぱおさん、ご指摘ありがとうございます。そうでした! 直しました。

porcobuta (2010/02/28 23:07:00)

イーノさんご無沙汰してます。

文中の7%は5%のミスだと思います。
私もよくやります。
この手の記事は間違い易いですよね。
それと中央値の計算のしかたですが、クリッツマンのP53の上を参照すると、リスク値がどうであれ中央値は2.65になると思います。

とよぴ~ (2010/03/01 6:37:00)

元本割れ・・・グラフで見るとわかりやすいです

ちなみにExcel 2003でも同じようにダウンロードできました

あまりに惚れ惚れするキレイなグラフのテンプレだったので「ユーザー定義」に取り入れちゃいました♪

ファンドの海管理人(イーノ) (2010/03/03 1:50:51)

porcobutaさん、こちらこそごぶさたです。
おっしゃるとおり5%でした。間違えてました…ご指摘ありがとうございます。
中央値の件、見直してみたのですがP53にあるのは過去の値からの求め方で、算術平均が5%でも幾何平均はいろんな値をとることは可能なので中央値もそれに応じていろいろ変化すると思うのですが、いかがでしょうか。
たぶんporcobutaさんのシミュレーションでも、期待リターンが一緒でもリスクを変えれば中央値は変化していく結果になるのではと思うのですが…

とよぴ~さん、こんにちは。
あのグラフ、実はExcel2007のデフォルトの設定なんです。デフォルトでもきれいなグラフが出るようになりました:-)

士季 (2010/03/03 22:59:48)

はじめまして。
最近、インデックス投資に目覚めまして、インデックスブロガーさんのサイトを徘徊しているうちに、ここにたどり着きました。
リスク資産の複利確率の連載記事がとても興味深かったです。

対数正規分布のメディアンの求め方について、リスク資産の複利確率(27)のコメント欄に、厳密性に欠けるかもしれませんが、記入しました。
現在、すでに解決されていたら、すみません。

今後の関連記事にも期待しています。

ファンドの海管理人(イーノ) (2010/03/04 12:08:59)

士季さん、はじめまして。メディアンの方のコメントも見ました。ありがとうございます(ただ、部積分を展開できるほどの知識がないので、勉強します…)。
複利確率の連載、とても力を入れて書いたので興味をもっていただけてうれしいです。今後ともご愛読ください!



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