2010年04月17日

「過去のリターン平均は5%です」←算術平均、幾何平均の2つがある

さて、以前の記事で「過去のリターンの平均」には、算術平均と幾何平均の2種類があるということに触れました。そして、算術平均で過去5年の平均リターンが1%だったとしても、幾何平均では過去5年の平均リターンは0.95%だったりと、両者が異なることを紹介しました。

そのときのエントリ「「過去のリターンの平均は5%です」←それ何の平均?」をちょっと復習。

例えば、5年間で次のように価格が変動した金融商品があったとします。左が変化率、右が基準価格を100としたときの価格です。

0年目 ±0% 100
1年目 +2% 102
2年目 +6% 108.12
3年目 -3% 104.8764
4年目 +1% 105.925164
5年目 -1% 104.86591236

グラフにするとこんな感じ。

Geo01

このとき、毎年の平均の出し方として、

0+2+6-3+1-1=5、これを5年で割って1%

これが「算術平均」。年ごとのリターンを単純に平均したものです。

そして、5年で100が104.86591236になったのだから、これを5乗根する。これが幾何平均。

(5√(104.86592136)/100) -1 = 0.95477654%。つまり幾何平均は約0.95%

幾何平均は、複利に基づいて計算された年ごとの平均です。0.954776654%の5年複利が4.86…%になります(計算式としては(1+0.95477654%)5=104.86591236)。

つまり、この投資信託の過去の平均リターンは「1%です」といってもいいし「0.95%です」といっても、どっちでもいいのです。よく雑誌や書籍、それに金融商品の説明資料にさえ「○○の過去の平均リターンは×%」って載ってますよね? でもそれが算術平均なのか幾何平均なのか、どっちか気にしたことなかったですよね?

でも過去の平均リターンを出す方法として、算術平均と幾何平均の2つがあって、どっちが正しくて、どっちかが間違っているのではなく、この2つは目的によって使い分けるものなのだそうです。

目的? なんの目的?

ここからが、このエントリの主題です。数カ月ほど前、愛読しているブログ「Porco Rosso Financial Weblog」で、ある本が薦められていました。

それが「証券投資のための数量分析入門 (単行本)」という本。面白そうだったのですがもう廃刊になっていたので、古本として200円ぐらいで買いました。

この本、大学の金融の教科書といった感じで、とてもしっかり書かれています。そしてこの本の160ページには次のように書いてあります。

もし投資の期待価値を推計したければ算術平均を用いるべきであると言うことである。しかし、投資が目標価値を上回るかそれとも下回るかの可能性を推計したいなら、幾何平均を用いるべきである。

はい。ここで「算術平均」と「幾何平均」のそれぞれの目的が登場しましました。整理しましょう。

「もし投資の期待価値を推計したければ、算術平均を用いるべき」
「投資が目標価値を上回るか下回るか、可能性を推計したいなら、幾何平均を用いるべきである」

これが何を意味するのか、深く考えるのは次回にしますので、ここでは簡単に考えてみましょう。もしも「この投資信託の過去5年の平均リターンは1%です」といわれたら、あなたはどう考えますか? 僕はこう考えます。

「じゃあ、これから1年で1%増えて、次の1年でまた1%増えて、その次の1年で…」

と、こう思いますよね? そしてよく考えてください。これって1%複利で増えることを期待してますよね?

でも、その1%は算術平均によって計算されたのでしょうか? それとも幾何平均によって計算されたのでしょうか?

この記事の上の方を振り返ってみてください。過去の平均リターンを複利に基づいて計算したのは幾何平均です! だから、もしも複利で増えることを期待するのであれば、その平均リターンは幾何平均によって計算されるべきでしょう?

だとすれば、この記事の例でいえば「過去の平均リターンは1%です」ではなくて「過去の平均リターンは0.95%です」の方で考えるべきですよね。算術平均で求められた平均を使って、複利計算してはだめなのです。

2~3年程度の短期ならともかく、10年20年といった長期では誤差が無視できなくなるのです!

そして、僕の知るかぎり、雑誌や書籍や金融機関の資料で登場する過去の平均リターンの多くは、どうやら算術平均で求められているらしいのです。これは関係者の方から聞いたこともあります。

「過去の平均リターン」という情報があったとき、それがどちらなのか、よーく気をつけるべきではないかと思います。そうじゃないと、気付かないまま過大な期待リターンを期待することになります。

続きます!

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通りすがり (2010/04/17 18:41:29)

 定期預金のようなリスク0の資産であれば算術平均と幾何平均は同じになる(はず)のでどっちでも複利計算していいような気がしました。するとリスクの大きい資産だとその辺りの違いをより意識した方がよいという話なんでしょうか。

イーノ・ジュンイチ(ファンドの海) (2010/04/17 22:33:21)

通りすがりさん、こんばんは。
そのとおりです。リスク0なら算術平均と幾何平均は同じですから複利計算して何ら問題ありません。
リスクがある資産なのに、過去の算術平均をもとに複利計算してしまうのが危険なんですね。

預金王 (2010/04/18 0:23:12)

>この投資信託の過去の平均リターンは「1%です」といってもいいし「0.95%です」といっても、どっちでもいいのです。

商売としては1%と言いたいトコでしょうね^^
預金にも単利のものがあるし(国債は単利)きちっと測定してからじゃないと投資はできませんね!
ちなみに国際分散投資のデータも、日本では昔から投資できていないので(外為規制)正確なデータはここ10年がいいトコでしょうね↓
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/toshin/ranking/20100401-OYT8T00314.htm
>1989年末時点で外国への投資を思いついたとしても、外国株式や外国債券に投資を行うファンドで20年前から現在まで継続しているものはありません。

うさみみ (2010/04/18 16:26:35)

そうなんですよね。
長期投資は複利を味方にとよく言われますが、算術平均を複利計算している人が多いですよね。
昔から気になっていました。

そもそも、毎年の騰落率が違うのに、期待リターン複利計算することが過大評価にならないのか常に疑問に思っています。

細かい作業が苦手なので検証する気力がありませんが。

吊られた男 (2010/04/20 22:32:01)

算術平均で出していることが結構あるんですね。

そうすると、そのような人たちは、
2年間で17000→7000→11000というような値動き(-58%→+57%)となると期待リターンは-0.5%だのように言うのですね・・・恐ろしい。

イーノ・ジュンイチ(ファンドの海) (2010/04/21 9:02:13)

うさみみさん、こんにちは。
おっしゃるとおり、騰落率の変動によって複利にならない可能性もあって、それは確率分布で表されるのですが、どうも確率分布の話は省略されることが多いんですよね。僕はその確率分布にこだわってます。

吊られた男さん、こんにちは。
実は算術平均で出してる資料のほうがずっと多いようです…というのも元ネタとなる資料の多く(情報会社の資料)が算術平均だからのようです。その数字の意味をあまり気にせず、多くの人がそのまま複利計算に使っているのが現状のようですね。



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