2010年05月11日
ピクテ初のインデックスファンドはブラジルと中国。担当者「自分が欲しいものを作りました」
今日はマネックス証券でブロガー向けに新しいインデックス投資信託の説明会があるというので行ってきました。今回発表されたのはピクテ投信の中国とブラジルのそれぞれの国に対応するインデックス投資信託でした。
「ピクテインデックスFシリーズ 中国H株」は、中国のハンセン指数に連動する投資信託で、「ピクテインデックスFシリーズ ブラジル株」は、ブラジルのボベスパ指数に連動する投資信託。
説明会では、この2つの投資信託の特徴が紹介されました。
■特徴:信託財産留保で投資家の平等性を高めた
なんといってもこれが最大の特徴。2つの投資信託とも信託財産留保があるのですが、これがなんと、購入時と売却時の両方にかかるのです。「中国H株」では、購入時に0.4%、売却時にも0.4%。そして「ブラジル株」では、購入時に2.6%、売却時に0.6%。
なぜこうなっているのか? ピクテ投信投資顧問の北根久之氏は次のように熱く説明してくれました。
投資信託では、毎日のように新たな購入者がいて、一方で投資信託を売却する人たちもいます。なので、投資信託の運用としては毎日株の買い付けを行うし、一方で株の売却もしています。このときにかかる株の買い付けにかかる手数料、売却にかかる手数料は一般には受益者みんなでワリカンして負担しています。
しかし、です。例えば新たな購入者のために買い付ける株の手数料はコストとなり、基準価格を押し下げます。先に買った人は保有しているだけなのに後から来る人のコストも負担してあげているのです。また、投資信託を売却して行く人のためにかかる株の売却手数料は、投資信託を売却した人は負担せず、残った人の投資したお金からやはりコストとして差し引かれます。これも保有し続けている人が、先抜けした人のためにコストを負担してしまっていることになります。
これはどんな投資信託でも必ずかかっているコストで、こうした投資家間の不平等をなくすために信託財産留保があるわけです。だから信託財産留保は、運用会社がもらうわけでもなく、販売会社や証券会社がもらえる手数料でもない。
しかし一般に信託財産留保も手数料だと思われていて、十分に活用されていない。というわけで、今回の投資信託では、ずっと投資信託を保有している人が新たな購入者や売却する人のコストまで負担することのないように信託財産留保を設定させていただいた。
これを設定するのはとても勇気がいることでしたが、長期的な投資のメリットや正しいことを伝えていくのも運用会社の使命だと思っているし、マネックスさんにも支持してもらっているので今回こういう設定をしました。
だそうです。ちなみに、中国株での信託財産留保の0.4%は、日本円から香港ドルにし、その香港ドルで株を購入するまでにかかる為替手数料、株購入手数料がおおよそ0.4%だとのこと。売却時にも同様に0.4%程度かかるため、この値になったとのこと。
同様にブラジル株でも、日本円からレアルにし、レアルで株を購入するまでにかかる手数料が0.6%。しかもブラジルでは株の購入に2%の税金がかかるとのことで、購入時にはその税金分2%が上乗せされているとのことでした。
■特徴:為替のタイミングによるリスクを抑えた
日本の投資信託のルールだと、投資信託を売却したときの為替レートによって日本円での売却価格が決まってしまうそうです(正確には翌日の為替?)。しかし、現実の運用では現地の市場で売却を決めてから実際に現地通貨のお金が手に入るのに数日、そこから為替で日本円にするのに数日かかるそうです。そうすると為替が変動することにより、ルール上決められた日本円での売却価格と、実際に入手できた日本円に差額が発生しますが、その差額は結局のところ投資信託の資産から出さざるを得ず、つまり僕たち投資家がリスクを負担していることになるそうです。
今回の投資信託では、このタイミングのギャップをできるだけなくすことを、経由する金融機関を工夫することで実現したため、リスクを相当減らすことができたとのこと。
■特徴:円をレアルに直接変換することでコスト削減
投資信託の運用の多くは、円からレアルへはドルを経由して変換したり、また売りと買いを相殺せずに自動為替で変換することが多いそうです。それを、円とレアルを直接変換してくれる金融機関を探して取引し、また売りと買いを相殺することで最小限の変換にして手数料を抑える、といったことを実現しているそうです。
特徴の紹介はここまで。
日本のピクテとしては、この商品がインデックス投資信託として初の商品だそうです。「なぜインデックス投資信託に参入したのか? そしてなぜこの2つの商品だったのか?」と僕が質問したところ、「これから投資家のリテラシーが高まってくるにつれて、インデックス投資信託の需要も高まると思っている。特に若年層ではそれが新興国のインデックス投資信託ではないだろうか。自分はそういうのが欲しいと思った。そして投資信託の仕組みを知っている自分からすると、明日から新たに購入してくる人のコストまで自分がワリカンするのはいやだと思った。だったら、自分で欲しいものを作ってしまえと。それでこの投資信託を作った」と答えてくれました。
ちなみにピクテ投信投資顧問の北根久之氏は「自分も相当の投資信託オタクだ」と言っていましたが、本当にそんな様子で熱く投資信託の運用の仕組みを語ってくれました。
と、ここまであんまりまとめられずに書いてしまいましたが、また投資信託の運用の裏側を聞けたようで楽しい説明会でした! 記憶とメモを頼りに書いているので、もしも勘違いなどあったらどなたか指摘してください!
詳しくて正しい商品情報はマネックスのWebサイトからどうぞ!「ピクテ・インデックス・ファンド・シリーズ 中国H株・ブラジル株 マネックス証券」
[関連カテゴリ]
・ 2.どの投資信託がおすすめ?
[広告]
≫次 : 長期投資でアクティブ型投資信託を選ぶ理由について考えた
≪前 : 過去の日本株式、海外株式、日本債券、海外債券の時系列データを探してみた
ご紹介いただいたファンドは良さそうですが、URL欄に書いたファンドは凄いですよ。
設定来一か月ちょっとでベンチマークが-1.1%で基準価格が-12.8%。
アクティブファンドですら大抵はベンチマークに対してちょっとだけオーバーウェイト、アンダーウェイトするだけで、ベンチマークからここまで乖離するファンドは少ないです。
「指数に連動するユーロ円債に投資」というところがマズいのでしょうかね。
COLEさん、こんにちは。
見てみました、本当だ、すごい乖離ですね。しかもこれ、2013年には償還なんですね…誰が買うんでしょうか。
今日オンライン説明会を聞いてきました。
内容は上記をもう少し初心者向けに説明したものだと思います。
で、あとでふと気になった点があります。
・説明用の資料(ブラジル)では、信託財産留保有りの基準価格はインデックスとほぼ乖離がなく、信託財産留保なしの基準価格は、最初に2%?ぐらい下げて、その後徐々に乖離幅が増えていくような図がありました。
・質問の時間に信託財産留保は新規設定時にはかからないんですかと質問したら、かからないというお返事でした。
この2つから言えることは、新規設定時の為替コスト、売買コストは顧客が負担しないって事です。そんなうまい話はないはずなのですが、どうでしょうか。
Tetsuさん、こんにちは。新規設定時には運用会社がある程度まとまった資産を最初に投入して、そのときのコストは顧客が負担することはない、ってことなんじゃないですかね。詳細はわかりませんが…
あ、償還日を見ていませんでした。外国人には買いづらいA株とはいえ、ピクテとはえらい違いですね。
Tetsuさんの疑問ですが、スタート時の基準価格が1万口あたり1万円で、顧客が1万円買ったとして、さらにコストはきっかり2.6%だとして、さらに計算を簡単にするため当日と翌日の株価は変わらないとして、
・信託財産留保なしの場合、1万円で1万口買える。でもそこから購入コストがかかるので、買った翌日は基準価格が2.6%下がって1万口あたり9740円になる。
・信託財産留保ありの場合、1万円から2.6%引かれて、購入できるのは9740円分だから9740口買える。購入にかかるコストは信託財産留保分で賄えるので、翌日の基準価格は1万円のまま。
信託財産留保はあくまで途中から買う人と最初から買う人の損得を揃えるものですから、仮に設定日に買う人しか居なかったら、損益は信託財産留保があってもなくても変わらない筈です。
また、コストは必ずかかるのですし(特に税金部分は)、ファンドと運用会社の資産は分けられているので、コストは必ず顧客が負担するはずです。運用会社自身がファンドに投資するとしても、資金としては運用会社の資金も顧客の資金も公平なので、運用会社の資金だけがコストを負担することはないはずです。そんなことがあったら分別、公平が保たれないわけで逆に不気味です。
あ~でも「追加設定(購入)時:2.6%、解約時:0.6%」と書かれているので、運用開始時(つまり追加でない時)に買った人はTetsuさんの質問に対する答えのように、かからないことになりますね。
じゃあやっぱりコストの分だけ基準価格が下がると思うんですけど、謎です。
>Tetsuさん、COLEさん、
説明会参加者として回答に挑戦してみます。
■Q1:信託財産留保無だけ最初に2%くらい下げてない?
信託財産留保無しのファンドも最初には指数に連動しています。PDFを拡大してグラフを見ると信託財産留保額の有無に関わらず設定時の基準価額は1万円です。
基準価額に一気に差が出るのはその翌日以降です。これは、純資産総額が10億と小さいのに新規流入資金が1億円も入ってくるので、信託財産留保額の有無が基準価額に与える影響が大きいからです。後半になれば数十億円の純資産総額に1億円の新規流入資金なので、信託財産留保額の影響が最初よりは小さくなっています。
だから、最初に一気に差が開いて後はゆっくりのグラフになります。
■Q2:信託財産留保は新規設定時にはかからない?
(回答者の真意の推測にすぎませんが)
「"実質的に"かからない」という意味かと思います。新規設定時に限っては信託財産留保額があろうが無かろうが、実質的に投資家の資産への影響に違いはありません。
信託財産留保額を2.6%払ったとしてもそれを全部その人達だけで分けるのですから、信託財産留保額を取られないのと同じです。
設定時の応募が1人1億円の10人で計10億円だとします。皆、信託財産留保額を2.6%取られるので、1億円は9740万円になります。でも、取られた信託財産留保額はファンドの内部に入るので、260万円×10(人)=2760万円の信託財産留保額は、この10人で分けます。そうすると1人の取り分は260万円です。
⇒あら不思議、払った額と同じだけ自分の取り分があるので、信託財産留保額は無いのと同じになります。
そして、ここから株式買い付けで2.6%のコストがかかるので、信託財産留保額の有無にかかわらず新規設定時の資産は9740万円。こんな話かと思います。
吊られた男さん、
ご回答ありがとうございます。
> ■Q2:信託財産留保は新規設定時にはかからない?
> 信託財産留保額を2.6%払ったとしてもそれを全部その人達だけで分けるのですから、信託財産留保額を取られないのと同じです。
これは凄く納得しました。
> ■Q1:信託財産留保無だけ最初に2%くらい下げてない?
こっちがちょっと気になって、信託財産留保無が2.6%下がるのは、シミュレーションで設定されたコストのままですから納得できます。
http://www.monex.co.jp/pdf/fund2/U818.pdf
によると
> スタート時点の純資産総額およびその後毎営業日の純流入資金の2%が金融取引税として差し引かれ、残額に対して0.6%の取引コスト(株式取引費用と為替取引費用)が差し引かれるものとする。
となっていますので。
じゃあ何故信託財産留保有だと、指数の動きに対して下がっていない(下がり幅が指数とほぼ同じ)なのかというと、
>「基準価額A」はスタート時点の純資産額およびその後毎営業日の純流入資金の2.6%が信託財産留保額として加算されるものとする。
スタート時の純資産額の2.6%が加算されるとして、それは誰が払ってくれるかと言うと、それは勿論スタート時に投資していた人以外にありえないわけで、
つまり、基準価格Aは運用開始時に10億/(1-0.026)=10.267億円集められているわけです。
投資家は10.267億円を払い、その中で0.267億が信託財産留保、10億が実際の投資額。
(ありえないことですが)その日、両替しブラジル株を買う間もなくファンドが清算されればファンド資産は10.267億ですから、投資家の手元には10.267億円戻ってきます。
ファンドは何も売買していないので当たり前ともいえますし、信託財産留保を取られて10億に減ったものが10.267億に増えたとも見えます。これが購入手数料2.6%のファンドとの違いとも言えます。
で、ファンドが実際に両替してブラジル株を買えば、株の値動きがなかったとしても税金と取引費用がかかってファンドの資産は10億に減ります。
実際の投資額が10億なので減っていないとも言えますし(これがグラフの基準価格Aが二日目に指数に対して下がっていない理由)、10.267億円を払ったのに評価額は10億に減ったとも言えます(この減少はグラフに反映されていません)。
一方基準価格Bの方は正直に指数の下落に加えて2.6%下がっているように見えます。
長々と書きましたが、要はTetsuさんの書かれた
> 信託財産留保なしの基準価格は、最初に2%?ぐらい下げて、その後徐々に乖離幅が増えていくような図がありました。
は「その後徐々に」は確かにそうなのですが、「最初に2%?ぐらい下げて」は、信託財産留保有の方はグラフに表れる前に2.6%下がっているわけで、基準価格のグラフとしては正しいのですが、運用開始時に投資した人の損益としては「最初に2%?ぐらい」の分過大に表されていると思います。
吊られた男さん、COLEさん、詳しい解説ありがとうございます。
実は、中国やブラジルに投資する他の投資信託から乗り換えるかどうか考えていたので当初の費用がどうなるのかとても気になっておりました。
新規設定時のコストの負担は顧客以外にはあり得ないのは同意します。
そうすると、
新規設定時に買った場合は、口数を減じて購入され、設定時の評価損益は0だけど、評価額は購入額より少なくなるということなのでしょうか。
そして、その時のコスト負担はいくらなのかが明記されていません。ファンドの立ち上げに結構かかったから最初だけ5%ぐらいとっても規約上は問題ないのかもしれません。たぶんそんなことはせず、おおよそ2.6%となるでしょうけど、いずれにせよ新規設定時に急いで乗り換えする必要はなさそうですね。
[トラックバックURL]