2010年08月29日
長期のリターンとリスクをどう計算するか?(5) ~ 幾何平均はなぜ中央値なのか? その1
ある金融商品の期待リターンを過去の実績から求めようとしたとき、過去の実績の算術平均は期待リターン(の推測)に一致することが分かりました。では、過去の実績の幾何平均は中央値に一致するというのは本当でしょうか?
書籍「「証券投資のための数量分析入門 (単行本)」」によると、
過去のリターンの算術平均=期待リターンに等しい
過去のリターンの幾何平均=中央値に等しい
なのだそうです。そして前回「長期のリターンとリスクをどう計算するか?(4) ~ 算術平均はなぜ期待リターンなのか?」は、算術平均が期待リターンに等しいことが分かりました。今回は、幾何平均が中央値に等しいかどうか、について考えてみましょう。
■中央値とは
中央値は平均値とはちょっと違いますので、その点をまず確認しておきましょう。中央値は、中位数、メディアンともいいます。例えば、分かりやすいように次の7つの数があったときの中央値は「4」です。
1、2、3、4、5、 10、15
上記の中央値は「4」ですが、平均は約「5.7」なんですね。このように中央値は平均値とはちょっと違います。中央値というのは、文字通り並んだ数字のちょうど真ん中。上の7つの数字でいえば、7つの数字の真ん中が中央値、ということになるわけです。
■ある金融商品の連続複利率が正規分布する、とは?
さて、今回考えようとしているのは「ある金融商品の期待リターンを過去の実績から求めようとしたとき、算術平均は期待リターンに一致することが分かりました。では、幾何平均は中央値に一致するというのは本当か?」です。
そして、考える前提として、金融工学で一般に言われていること「ある金融商品の連続複利率の収益率が正規分布する」とします。
この「ある金融商品の連続複利率の収益率が正規分布する」とはどういうことでしょうか?
まず、ある金融商品の過去何年かの収益率(リターン)を考えてみましょう。例えば、TOPIXの2008年の月次の値動きはこうでした。TOPIXの値の右にある、%で示した値が収益率(正確には収益率+1)です。収益率は、前月からどれだけ上昇したか、下降したかを示しています。
1月 1,594.07 100% 2月 1,568.39 98.4% 3月 1,450.00 92.5% 4月 1,624.17 112.0% 5月 1,683.40 103.6% 6月 1,579.09 93.8% 7月 1,559.44 98.8% 8月 1,501.23 96.3% 9月 1,311.57 87.4% 10月 1,045.90 79.7% 11月 1,007.00 96.3% 12月 1,037.53 103.0%
で、以前の記事「連載:リスク資産の複利確率(11)~連続複利とは? 無限に連続する複利の金利を求める」で調べたように、連続複利率というのは次の式で表せます。
連続複利率 = loge(収益率)
つまり、収益率(月次だったり年利だったりのリターン)と、連続複利率の関係は次のような感じです。
収益率 連続複利率 R1 loge(R1) R2 loge(R2) R3 loge(R3) R4 loge(R4) R5 loge(R5) R6 loge(R6) R7 loge(R7) : : Rn loge(Rn)
このとき、loge(R1)~log(Rn)が正規分布する、というのが「ある金融商品の連続複利率の収益率が正規分布する」なんですね。
で、正規分布するってのはどういうことでしょうか。例えば、日本人の成人男子の身長データを1000人分集めたとしましょう。伸長ごとに棒グラフで並べると、だいたい165cmから170cm付近のひとがいちばん多くて、190cmを超えたり150cm以下だったりする人は少ないはずで、おおむね170cm付近を中心に正規分布するようにみえるのではないでしょうか。こんな感じ。

これと同じように、連続複利率を値の大きさに沿って棒グラフで並べると、例えば103%を中心として、90%以下や120%以上といった極端な値は少なく、正規分布の形になる。これが「ある金融商品の連続複利率の収益率が正規分布する」、ということなわけです。こんな感じ。

長くなったので、続きます。
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投資信託を趣味にしているビジネスマン、イーノ・ジュンイチです。いつもご愛読ありがとうございます!




うおー、こっからの続きが一番読みたいのにww
コメントありがとうございます。たぶん来週の土曜日には公開できると思いますので、お楽しみに!
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