2010年09月 4日

長期のリターンとリスクをどう計算するか?(6) ~ 幾何平均はなぜ中央値なのか? その2

ある金融商品の期待リターンを過去の実績から求めようとしたとき、過去の実績の幾何平均は中央値に一致するというのは本当でしょうか? 前回は、連続複利率が正規分布する、というところまで考えてきました。

もういちど、前回の「ある金融商品の連続複利率の収益率が正規分布する」ということはどういうことなのか? について振り返ってみます。

まず収益率(月次だったり年利だったりのリターン)と、連続複利率を考えたとき、こういう関係になります。

収益率 連続複利率
R1	loge(R1)
R2	loge(R2)
R3	loge(R3)
R4	loge(R4)
R5	loge(R5)
R6	loge(R6)
R7	loge(R7)
:	 :
Rn	loge(Rn)

で、右側の連続複利率が正規分布しているはずだ、というわけです。つまり「連続複利率の収益率が正規分布する」ってのは、要するに連続複利率が正規分布するっていうのを正確に言ってるだけです。

収益率と連続複利率の関係を別の形で表してみましょう。連続複利率のloge(R1)~loge(Rn)をCR1~CRnで表すと、収益率は次のように表せます。

収益率 連続複利率
eCR1	CR1
eCR2	CR2
eCR3	CR3
eCR4	CR4
eCR5	CR5
eCR6	CR6
eCR7	CR7
:	:
eCRn	CRn

この場合、CR1~CRnが正規分布する、というわけです。ということは、収益率を示すeCR1~eCRnは、正規分布を乗数に持つeのべき乗ですから、収益率そのものは対数正規分布していることが分かります。e正規分布は、対数正規分布を表す式なのですから。

さて、「収益率の幾何平均は中央値に等しい」かどうかを調べるのでしたよね。

ではまず、収益率eCR1~eCRnの幾何平均を求めてみましょう。こうなりますよね。

収益率の幾何平均=n√(eCR1 × eCR2 × eCR3… × eCRn

ってことは、こうですよね。

収益率の幾何平均==e(CR1+CR2+CR3+…CRn)/n = eCR1~CRnの算術平均

eCR1~CRnの算術平均が収益率の幾何平均を表す式ですね。

ところで対数正規分布、つまりe正規分布(平均μ、標準偏差σ)に対しては、次の公式が成り立ちます(参考:連載:リスク資産の複利確率(26))。

e平均μ = 中央値

これを念頭に置いて元の、収益率の幾何平均の式に戻ってみましょう。収益率の幾何平均は次の式で表せました。

収益率の幾何平均=e正規分布するCR1~CRnの算術平均

算術平均とは、要するに平均値μのことです。つまり、

収益率の幾何平均=eCR1~CRnの算術平均=e平均μ=中央値

ということになりませんか、なりますよね? はい、これで収益率の幾何平均は中央値と等しい、ということが分かったことになります。

もちろんこれは前提として「収益率の連続複利率が正規分布する」ことが条件であることをあらためて書いておきます。

これで以前の記事「長期のリターンとリスクをどう計算するか?(3) ~ 過去の実績の算術平均と幾何平均」で謎として提示した、「ある金融商品の連続複利率の収益率が正規分布する」という前提の元で収益率の幾何平均は中央値となる、というのは本当か? が確かめられたと思います。

そしてこれによってずいぶんいろんなことがすっきりしてきました。続きます。

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I.金融工学

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