2011年01月15日

積み立て投資をすると何が起きるのか? 書籍「半値になっても儲かる 『つみたて投資』」

長期投資をするなら、毎月一定額ずつ投資信託を買い付ける「積み立て投資がよい」と言われています。その積み立て投資をすると何が起こるのか? を丁寧に説明したのが本書。筆者の星野さんからご献本いただきました。

積み立て投資は、毎月少しずつ金融商品を買い付ける方法で、一定額ずつ買い付ける場合には「ドル・コスト平均法」と呼ばれたりします。

Tsumitatebook

本書では、そのドル・コスト平均法での積み立て投資を行うことで、いかに安心して投資ができるかを具体的に示した点が特徴です。例えば、この表紙のグラフ。右肩下がりのグラフで最後にちょっとだけ上昇しています。こんな値動きの金融商品に投資した場合、いかにも損してしまっているようなイメージですが、実際に積み立て投資をした場合には、こんな値動きでも結果は儲かっているのだ!という驚きが、本書の最大の魅力。

このグラフでは、毎月1万円を10年投資するとして、最初の7年間は右肩下がり、残りの3年間は上昇するけれども終値は始値に届かず、という状況で合計120万円投資をしたところ、終わってみれば139万円と元本割れどころか儲かっているというのです。

こうした例をたくさん出して、「つみたて投資は『下がっても、少し戻せば大丈夫』という安心感があります」(p27)と、積み立て投資の安心感を徹底的に紹介しているのです。これほどいろんなパターンを具体的に紹介し、つみたて投資をすると何が起きるのか? を明らかにした本はこれまでありません。

その点で、「投資して損したらいやだな」とか「どうしたら損しなくて済むだろう?」と考えて投資を躊躇している人たちへの、投資の恐怖感をやわらげて「投資してみようかな?」という雰囲気を作り出すという本書の目的は成功していると思います。

本書は一般的な投資の入門書ではないので、ほかの入門書で投資信託の一般的な知識を得つつ、本書を一緒に読むといいのではないかと思います。

ところで、積み立て投資はたしかに僕たちビジネスマンにとって、投資を続ける道具として優れていますが、それ自体が投資法として有利か不利かといわれれば、一括投資と比べて有利でも不利でもないはずです。ちょっとだけそれを紹介させてください。

例えば上がったり下がったりする相場であれば、一括投資より積み立て投資の方がよい結果になりやすそうですが、一方で上昇相場では積み立て投資より一括投資の方がよい結果が出ます。あるときには有利だが、別の状況では不利で、全体を総合すれば有利でも不利でもない、ということなんですね。

で、数学的に考えると、積み立て投資というのは「リスクを低く抑える」投資法と言い換えることができます。それをグラフで見てもらいましょう。

これは60万円を、期待リターン5%、リスク10%の金融商品に一括投資したとき、5年後にどうなるかを予想したグラフです。

期待リターン : 5.00% リスク : 10.00%
元本 : 60万円 積立金額 : 0万円 期間 : 5年
期待値 : 76.58 標準偏差 : 16.46
中央値 : 74.87 最頻値 : 71.56

by 投資信託のガイド:アセットアロケーション分析

5年後、結果の平均(期待値)は76.6万円、いちばん起こりそうな結果(最頻値)が71.6万円、結果のばらつき=リスク(標準偏差)は16.46万円となっています。

では同じように60万円を、こんどは毎月1万円ずつ5年間積み立て投資したときにはどうなるでしょうか?

期待リターン : 5.00% リスク : 10.00%
元本 : 0万円 積立金額 : 1万円 期間 : 5年
期待値 : 67.81 標準偏差 : 8.52
中央値 : 67.28 最頻値 : 66.24

by 投資信託のガイド:アセットアロケーション分析

こちらも5年後には総投資額が60万円になりますが、結果の平均(期待値)は67.8万円、いちばん起こりそうな結果(最頻値)は66.2万円、結果のばらつき=リスク(標準偏差)は8.5万円となりました。

5年後のリスク(標準偏差)を比べてみると、一括投資は16.46万円、積み立て投資は8.5万円と、積み立て投資のリスクは約半分になっています。積み立て投資ではリスクを抑えることができることが分かります。

右側の水色のグラフの形を見ても、積み立て投資の方が山が高く裾野が狭くなっているので、より最頻値に近い結果が出やすいことが分かるでしょう。

一方で、期待値を比べると一括投資は76.6万円(儲けは16.6万円)に対して積み立て投資は66.2万円(儲けは6.2万円)と、儲けの期待値は半分以下です。

こんな風に、積み立て投資は「損をしにくい=リスクが低い」その代わりに、リターンをある程度あきらめる、そんなトレードオフがあるのですね。

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積立投資と一括投資は別物:『半値になっても儲かる「つみたて投資」』 [東大理系卒,サラリーマン研究者の給与明細&読書日記から]

預金王 (2011/01/15 21:29:59)

すみません。
標準偏差が半分になる根拠がわかりません・・
下記の論文では一括の方が有利と書かれていますが、どちらもバラツキは大差がないように思えます。

http://www.ris-keiei.com/faculty/takami/n27_takami_2010.03.pdf
>Thorley[1994]はIIDノイズ過程から拡張を試み、平均回帰性を反映したパフォーマンス評
価に取り組んでおり、その問題意識は評価できるものの、平均値と分散との多面的評価をとら
ず、両指標を統合したシャープレシオのみ用い、平均回帰性がある場合でもドルコスト平均法
は一括投資法に劣後する(0.49<0.51)と結論づけている。この点について、計算過程を考察
したところ、一括投資法とドルコスト平均法との大小関係は、平均値では4.83%>4.75%、標
準偏差では9.15%<9.86%であり、前者がドルコスト平均法パフォーマンス優位、後者では一
括投資パフォーマンス優位であることが判明した。すなわち、ドルコスト平均法が絶対的に劣
後するわけではない。(引用終わり)

投資期間を決めたら、投資額を減少させていった方がリスク(恐怖)を抑えられるように思えますがいかがでしょう?

イーノ・ジュンイチ(ファンドの海管理人) (2011/01/15 22:14:52)

預金王さんこんにちは。

>標準偏差が半分になる根拠がわかりません・・

とても簡単な理由です。

リスクの絶対値は、期間が短い方が小さい、長い方が大きいですよね。同じ金額の投資しなら、1年後より2年後の結果の方がばらつきが大きくなります。つまり、投資期間が長い方が標準偏差(リスク)の絶対値が大きくなります。

これは分かりますよね。

一括投資とは、全額が投資期間全体に渡って投資されています。

一方で、積み立て投資は分割して投資されるので、投資金額のほとんどすべてが全体の投資金額より短い期間しか投資されていません。

だから積み立て投資の方がリスクが小さくなる&リターンも小さくなるのです。

nanashi (2011/01/15 23:14:08)

いつも楽しく拝見させて頂いています。
ちょっと疑問があるので書き込みさせてもらいました。

確かにドルコストの方が、リスクは小さく見えますが、あくまで5年ですよね。

これが30年とかになって、しかも、その後、数十年かけて取り崩すとなったら、結局、受けるリスクは大きいので、一括投資出来る人は一括で良いんじゃないでしょうか?

もしくは、リスク商品と無リスク商品でリスクをコントロールしてリバランスするとか。

素人意見で申し訳ありません。。


こんな書き込みしてても、株式投信に毎月積立してるんですけどね。

イーノ・ジュンイチ(ファンドの海管理人) (2011/01/16 0:35:46)

nanashiさん、こんばんは。

期間が長くなっても、つねに一括投資より積み立て投資の方がリスクが小さくなると言う関係は変わらないので、よりリスクを取って一括投資を選ぶか、リスクを抑えて積み立て投資をするか、だけの選択だと思います。

リスクを下げるために無リスク商品と組み合わせてバランスする選択肢もある、というのはまったくそのとおりですね。リスクを下げる方法は積み立て投資だけじゃないですからね。

nanashi (2011/01/16 1:11:30)

イーノさん

レスありがとうございます。
もちろん、積立の方がリスクが低くなるのは分かります。
ただ、積立完了後、いわゆる老後になった時点(サラリーのなくなった時点ですね)以降、イコール積立の終わった後は、投資しているアセットクラスのリスクに振り回されるので、結局は積立も一括も取り崩していく段階では、リスクに振り回されるんじゃないかなぁ、と。。。


なんか、上手い言葉が思いつかなくてスミマセン。。

もうちょっと勉強して、上手く話せるようにします。

porcobuta (2011/01/16 17:56:28)

イーノさんお久しぶりです。
この2つの比較は「リスクのある投資商品があったとして、60万円最初に全部買える人が有利か、それとも今お金は無いけど毎月1万円出せる人が有利か」になってます。
もし一括か積立か?であるならば積立サイドは無リスクの貯金も考慮しなければなりません。リスク資産を保有している期間が短いのであればリスクが低いのは当然です。

イーノ・ジュンイチ(ファンドの海管理人) (2011/01/16 22:52:25)

procobutaさん、ごぶさたしています。
おっしゃるとおり、積み立て投資してない残りの金額は、無リスク資産に投資していて、少しずつリスク資産に移動している、という計算をするのが、厳密な比較になりますね(という理解でいいんですよね?)

たしかにそこは比較としては抜けていました。でも実際に計算すると、ほとんど影響なさそうな気もするのですが、どうでしょうか。

マリオ (2011/01/20 15:40:15)

私は、ある程度影響すると思います。

イーノさんは、
1. 期待リターン5%、リスク10%の金融商品が存在する。
2. リスクフリーレートは、影響ないほど小さい。
の2点を仮定しています。

一方、procobutaさんは、
「もし、期待リターン5%、リスク10%の金融商品が存在するような金融情勢なら、
その時のリスクフリーレートは、無視できないくらい大きい。
つまり、0.5 ~2.0 % ぐらいになっているはず」
と思っているのではないでしょうか?

もちろん、イーノさんが「株式リスクプレミアム」を強めに想定しているのなら、
イーノさんの仮定は正当化できると思います。
ただし、その時の「株式リスクプレミアム」の値は、一般的な値よりは大きいと思います。

porcobuta (2011/01/20 17:32:49)

マリオさんが代弁してくましたけれど、今はリスクフリー・レート0でも違和感がありませんが、立場を変えて60万円を借金して株を買うとすればどうでしょう。ファィナンスではそういう考え方をします。資金コストを0で見る前提であればかまいませんが、信用買いでも2%はとられます。5%の期待リターンに2%は大きいですよね。細かいようですがイーノさんは全てキチンとやってきているから敢えて書きましたよ。

hojyaman (2011/01/23 12:41:46)

ボラティリティを低く抑える効果としては、優れているわけですが、期待リターン等で目標がある人にはお薦めできないやり方かもしれません。

年率20%成長目指すとかね。

アクティブに運用するのは難しいですけどね。このブログ読んでちょっと感動しました。

ここまで投資信託にフォーカスしているのはすごいですね。よろしければ私のブログの趣旨とも合いますので、相互リンクをお願いできるとありがたいですが。

預金で寝かせてしまっている知り合いすべてに読んでもらいたいと思います。本当に。

hojyaman (2011/01/23 12:43:36)

後私は新興国についてもこれからどんどん注目集めると思ってましてHPを作っております。
お時間があったら参照してみてください。
まだまだこれから作り込みますがw

海外投資ファン (2011/06/09 16:24:14)

イーノさん。いつも「目からうろこ」の記事ありがとうございます。

積み立て投資のメリットは、「一括投資が困難な時に」「退職後の資金を運用」「ドルコスト平均法を活用」「少ない金額で長期投資」「子どもの教育費」などとされていますから、私のようにそこそこの収入はあっても、まとまったお金はなく、これから子供の進学に学費がかかる人間にはぴったりです。

ところで数千万円からが最低投資単位だと思っていたヘッジファンドも、最近では数十万円から積み立てられる商品もあるようです。

(みんなの海外投資)
http://www.minkaigai.com/archives/category/kaigaifund/jisseki

リタイア後まで視野に入れると、運用利回りが魅力的なので考えてみようと思うのですが、イーノさんのご意見をお聞かせ下さい。

株式投資暦30年 (2011/06/13 19:23:49)

>海外投資ファンさん

それってこれのことですか?

http://abraham-bank.com/abp_landing/05/?oa=apm7213

右肩上がりの「実績」のあるヘッジファンドを毎月積立てをするべき、という戦略のようですな。

上げ下げを繰り返す株や投資信託なんかを積み立ててドルコスト平均だと喜ぶよりも、よっぽど理にかなっていると思った。

過去右肩上がりだからといって今後もそうだとは限らないが、過去、下げているファンドに投資するよりもマシに思えるが如何?



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