2011年01月30日

インデックス運用とアクティブ運用の違いは「リスクの取り方」だという

いま、時間があるときにちょっとずつ読んでいる本「金融工学理論と現実 ― 効率市場パラドックスへの挑戦」は、インデックス運用、アクティブ運用、そして効率的市場仮説の関係について書いた本です。

正直なところ、読んでいても難しい記述がえんえんと続いて理解できない部分も多いのですが、そのなかでとても面白い記述を見つけたので、ちょっと長いのですが引用したいと思います。

それは、このエントリの表題にも書いた、インデックス運用とアクティブ運用の違いについて記述した部分です。ふつう、インデックス運用とアクティブ運用との違いは、アクティブでは銘柄を調査するがインデックスは調査はしない、といった運用手法の違いや、コストの違いなどが説明されますが、それとは違う新鮮な説明でした。78ページから引用します。

セミ・パッシブ運用は、インデックスの構成銘柄をすべて買うのではなく、何らかのマルチ・ファクター・モデルによってインデックスの動きをリプリケートさせて運用するのが通常である。マルチ・ファクター・モデルの運用にあたっては、いくつかの暗黙の仮定が存在する。

まず、インデックス運用でよく用いられているのは、インデックスの全銘柄を買うのではなくて、全銘柄の一部だけを用いて、それをできるだけ指数に連動するように「マルチ・ファクター・モデル」という数学的手法を用いて運用をしている、ということを指摘しています。そして、そのマルチ・ファクター・モデルについての指摘が続きます。

 第一に、マルチ・ファクター・モデルにおいては、ファクター・リターンは通常1カ月前のデータに基づいた推定値を利用するが、将来にわたってその値が継続する保証はない。リターン・リバーサル現象があるかもしれないし、ファクター・リターンは月によって変化する。

 第二に、株式のインデックス・ファンドの場合は気がつきにくいが、例えば債権やCB(転換社債)のインデックス・ファンドの場合は、毎月のように償還やデュレーションの変化が起こり、ベンチマークに合わせるだけでも、コストは相当なものになる。

最初に指摘されているのは、マルチ・ファクター・モデルを計算するには過去のデータを用いて計算しているのだ、という原則です。これが、次の第三の指摘と結びつきます。

 第三に、ファクター間の共分散が同じ構造である保証はない。つまり、インデックス・ファンドと言っても、何ら予想を入れないのではなく、将来も構造要因が普遍である、という予想を暗黙の内に入れているのである。その意味では、パッシブ運用とアクティブ運用の差は、ファクターにリスクを取るのか、個々の銘柄にリスクを取るかの違いしかないことになる。

ここはちょっと分かりにくいのですが、要するに「先月と今月は似ているはずだ、と予想してポートフォリオを組むのがインデックス運用」「ファンダメンタルを分析し、それによって個々の銘柄の善し悪しを予想してポートフォリオを組むのがアクティブ運用」であり、どっちも予想に基づいて運用しているのは一緒。ということを言っているのだと思います。

そしてインデックスとアクティブは、単にその予想がなにに基づいているのかの違いだ、というのです。

さらに、ここで第二の指摘でいっているのは、インデックス運用では、ベンチマーク(つまり基準になるインデックス)に連動させるたために必然的に発生する売買コストは実は現実にはそれほど安くないのだ、ともいっています。

これは、アクティブ運用なら、調査の結果よいと思われる銘柄を長期保有すればインデックス運用ほど銘柄入れかえの必要がないはずで、その点でコスト的にはインデックス運用のほうが負担が大きいのではないか、ということを行間に読み取ることができます。

そして、本書ではこういう疑問を投げかけるのです。

問題は、リサーチのコストが、パッシブの回転率と比較してどの程度かかるかということである

この答えを著者はどのように書いているのか? は次回に。

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