2011年03月19日
インデックス運用とアクティブ運用はどちらも予測に基づいている
アクティブ投資は調査と予想に基づいた投資で、パッシブ投資はそうではない、と一般に思われていますが、実はそうではない。パッシブ投資にも「今日と明日は基本的に変わらない」という予想を基にしたリスクをとっているのだ、という考えを前回紹介しました。今回はその続き。
前回は本「金融工学理論と現実 ― 効率市場パラドックスへの挑戦」から、アクティブファンドとインデックスファンドはどちらも予想に基づいた投資であり、単にその予想がなにに基づいているのかの違いだ、という考えを紹介しました。
それは「先月と今月は似ているはずだ、と予想してポートフォリオを組むのがインデックス運用」「ファンダメンタルを分析し、それによって個々の銘柄の善し悪しを予想してポートフォリオを組むのがアクティブ運用」である、ということ。
すると次の問題は両者のコストがどうかかるか。アクティブファンドにはリサーチコストがかかり、パッシブファンドにはインデックスに追従するためのひんぱんなリバランスコストがかかる、ということになります。一般に、インデックスファンドの方が低コストだと思われますが、筆者は次のような疑問を投げかけています。
問題は、リサーチのコストが、パッシブの回転率と比較してどの程度かかるかということである
さて、筆者の考えは? アクティブファンドについて、筆者はこう指摘しています。80ページから引用
アクティブ運用において、コストを削減するための最良の方法は、コストをかけて市場構造をリサーチし、場合によっては若干の予測を入れ、売買回転率を抑えることである
ではパッシブファンドについてはといえば、次のように書いています。79ページから。
実務的にはこれらのリスクやコストを低減する方法として、インデックス・ファンドの運用哲学とは一件矛盾するが、投資家が何らかの予測を入れることが行われている。世の中でインデックス+α(プラフ・アルファ)運用と言われるのが、この運用スタイルであるが、要するに何らかの予想を入れることで、インデックス・ファンドの回転率(リバランス・コスト)を抑えているのである
パッシブファンドのリバランスコストを抑えるには、予測を入れることが行われているということだそうです。なるほどね。
そしてこうまとめています。
このように考えると、投資にあたって必要なのは、パッシブとアクティブを形式的に分けるのではなくて、どちらも予測に依存するのであると言うことを理解したうえで、両者の違いは、リスクの取り方(ファクター・リスクなのか、個々の銘柄のスペシフィック・リスクなのか)にあるということに注目する必要がある。
なかなか興味深い意見でした。機会があれば実際にインデックスファンドを運用している方に、こうした意見に対する感想を聞いてみたいですね。
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昔の記事について、です。
リスクのある投信に投資すると、複利の影響を受けられない、というような記事でした。
コストを考えないとすると、何だか納得できないような気がしてしまいました。一応全て読みましたが、理解が足りない部分も多いので、勘違いの文章を書くかもしれませんが、お許しください。
リスクのあるものに投資すると、一人勝ちが起きる、という話等を見ても、この考えは、デイトレなどに当てはまる考えで、インデックスは、市場全体が上がれば、やはり複利の影響を受け、高い利回りを享受できるのでは、と思っています。
天文学的に稼ぐケースがあり、それによって、最頻値が押し下げられていて、実際にはないケースなのではないか、と考えています。直感的なイメージでは、インデックスは複利期待値、アクティブは、それより低い最頻値が最も多くなり、複利利回りより期待値が低くなっている理由として、一部の大きく稼ぐ人に利益を奪われ、その分インデックスに負けている状態、という感じです。
良く分からない表現ですみません。
もちろん、コストの分だけ、パッシブファンドは、インデックスに負ける、というのは、当然ですが。
長い連載で思った事は、『デイトレをすると、全員の資産の増加はインデックスと連動するが、インデックスに負ける投資家がほとんど』『その理由は、リスクのある投資を繰り返すと、一部の勝ち組に利益が集中するため』という証明かな、という事です。
4人の投資家がいて、30%儲けるか、損するか、を2回やると、4人中1人だけがプラス、3人がマイナスだが、トータルは、プラマイ0、等、まさに、その考えです。言い換えると、『アクティブ運用すると、インデックスに負ける人がほとんど』『しかし、トータルではインデックスと同じ利益』『理由は(コストを除外すれば)一部の勝ち組に利益が集中するため』
『インデックス投資は、(コスト除外すれば)複利で回せる』『最も出やすい利回り(最頻値)はインデックスを下回るが、それはアクティブ運用した結果を表わすもの』
といったイメージです。
実際は、やってみないと分からない感じですね。
「忙しくて相場を見ている暇がない」「金融機関は投信を手数料稼ぎの道具にしているとしか思えない」という人もいると思います。私はこういう人にこそ、海外ヘッジファンドが向いていると思います。
昔は怪しげに思われていましたが、今ではずいぶんと透明性が改善しました。私はフレンズプロビデントの「プレミア」という商品で積立投資をしています。(参考「みんなの海外投資」http://www.minkaigai.com/archives/309)。ミドルリスクのポートフォリオでも設定来の平均運用利回りは15%程度です。
一方、日本で人気の積立型投信といえば、たとえば運用残高を伸ばしているセゾン投信の「セゾン・バンガード・グローバルバルファンド」で、設定来騰落率がマイナス21.5%(2011年6月30日現在)。
いずれも設定後に金融危機に見舞われたのは共通していますが、その後の上昇相場への乗り方が大きく異なります。中身を見れば要するにほぼインデックス運用。株と債券が半分ずつ、その1/3ずつを日米欧に配分。こんな単純なポートフォリオは自分でも作れます。
「とにかく手数料が安い!」というのがインデックス運用の売りだとは思いますが、どうしてこんな運用成績の悪い投信がそんなに売れるのか? 私にはまったく理解できません┐(-_- )┌
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