2011年07月23日

(続)リスクはマイナスリターンみたいなもの。リスクが高いだけで結果はどんどん悪くなる

金融商品の値段が上がったり下がったりするリスクがある場合、その上がったり下がったりだけでいつの間にか値段が下がっていくんだよ、危ないよ、という話を前回書きました。そしたら、もうちょっとちゃんと説明しなさいな、というコメントをいくつかいただいたので、頑張ってもう少しこのことについて書くことにしましょう。

実はずっと以前にも、リスクについて似たようなことを書いたことがありました。それは吉本佳生氏の書籍「金融機関のカモにならない! おカネの練習問題50」の内容を紹介した記事「リスクがあるとき、複利はひとり勝ちを生む」で、でした。

そのときの内容を、もういちど振り返ってみます。

このときの例では、1年後に株価が30%上昇するか、もしくは30%下降するような株を2年間運用したと想定しています。

こんな株を2年間運用した場合、結果は4通り考えられます。こんな感じ。

Yoshimoto_fig01

図で分かるように、4通りのうち3通りまでは元本割れ、なんですね。複利の恩恵にあずかって元本より増やしたのはわずかに1通りだけ。前回の記事で見たように、リスクに揺さぶられているうちに株価が元本割れしてしまうのです。でも、全体の平均は0%のまま。

ポイントは、リスクがあるほど多くの負け組と小数の勝ち組に分かれていくこと。リスクによって全体にどんどんと値が押し下げられていくのですが、一部の勝ち組だけは複利でどんどん殖えていくので、平均(=期待リターン)で見ると一定に見えるところです。

平均(=期待リターン)は0%だから「増えてないけど元本割れもしないのだな」と思ったら、その実態は高い可能性で元本割れする、けれどごくわずかに超儲かる可能性がある、ということです。まるで宝くじのような状態。

これを確率分布で表したのがこのグラフ。詳細な計算方法は、このブログの「H.リスク資産の複利確率」カテゴリの記事をご覧ください。

分布は対数正規分布になります。期待リターン0%、リスク10%で30年間運用した場合、上位40%点が98.9なので、運用結果は約60%の確率で元本割れします。最頻値は64あたりなので、64万円くらいに減ってしまう可能性が一番高いと。

期待リターン : 0.00% リスク : 10.00%
元本 : 100万円 積立金額 : 0万円 期間 : 30年
期待値 : 100.00 標準偏差 : 58.98
中央値 : 86.13 最頻値 : 63.91

by 投資信託のガイド:アセットアロケーション分析

リスクが20%に高まるとさらに厳しくなって、約70%の人が元本割れ、最頻値は17.12と悲惨な値になっています。

期待リターン : 0.00% リスク : 20.00%
元本 : 100万円 積立金額 : 0万円 期間 : 30年
期待値 : 100.00 標準偏差 : 149.78
中央値 : 55.53 最頻値 : 17.12

by 投資信託のガイド:アセットアロケーション分析

リスク20%の状態で、半数の人が元本割れを起こさないためには2%程度の期待リターンが必要です。

期待リターン : 2.00% リスク : 20.00%
元本 : 100万円 積立金額 : 0万円 期間 : 30年
期待値 : 181.14 標準偏差 : 262.56
中央値 : 102.86 最頻値 : 33.17

by 投資信託のガイド:アセットアロケーション分析

こんな風にリスクはどんどんリターンをむしばんでいくわけで、リターンを増やしたいからとリスクも増やすのは慎重に考えるべき行為なんだといえるわけです。

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預金王 (2011/07/24 1:10:14)

リスクを取ると負ける確率が増え、運よく勝った人に富が集中していく・・
リスクを取らなければ皆同じように富が配分される。

投信の場合毎年手数料も引かれていきますから、(結果として)儲かる可能性が期待リターンより低くなる。
こうなると平均すれば確実にマイナスになるゲームのような気がしますが、リターンを増やしてプラスに転じる公式はないのでしょうか?

イーノジュンイチ (2011/07/24 11:35:15)

預金王さん、こんにちは。
リターンはできるだけ減らさずにリスクを減らす方法はあります。それが、アセットアロケーションをきちんと考えること、ですね。

K (2011/07/26 23:17:38)

概要はイイのですが、例が不適切だと思います。
+30%の反対は、1/1.3なので、約-23%であって、-30%は違和感あります。

イーノジュンイチ (2011/07/27 12:54:45)

Kさん、こんにちは。たぶん連続複利のときと年率のときで考え方が変わると思うので、その辺もうまく説明できるかどうか、ちょっと考えてみます。なにか参考になる情報があれば追加で教えてください。

ななしのビギナー (2014/06/23 23:35:04)

年率+25%または-20%(連続複利に直すと±22.3%)でランダムに値動きして20年で10勝10敗して元に戻ってしまった銘柄があるとします。仮に日経平均と呼ぶことにします。
結果だけ見れば10勝10敗、勝率50%、成長率0%が実力なのだと思うところですが、勝率50%でシミュレーションを繰り返してみるとその期待値(算術平均)は年率+2.5%…
値上がりしていないのに期待リターンと言われるとびっくりしてしまいますが、(1.25+0.8)/2=1.025なのでこれはこれで根拠があるようです。

このままですと中央値は±0%になってしまいますが、例えば無リスク資産と1:1で持ってリバランスすると+12.5%と-10%、連続複利で+11.7%と-10.5%となり10勝10敗でもプラスリターンが得られるようになります。
あるいは日経平均が独立していくつもあったらそれらに分散投資すれば元本割れの可能性を更に小さくできます。

ゼロがマイナスにではなくゼロがプラスになるように書くとイメージがだいぶ違ってきますね。



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