2011年07月16日
リスクはマイナスリターンみたいなもの。リスクが高いと結果はどんどん悪くなる
期待リターンが0%の金融商品があったら、長期で保有しても結果はだいたい0%だと、普通はそう思いますよね? でもリスクがあると、そんなに都合よくいかない、という話を今回は書きます。
投資信託など金融商品の説明でよくあるのが「期待リターンが5%なら、長期では5%の複利が期待できます」という話。でもそうじゃない、リスクがあったら複利にならないんだよ、ということを僕はこのブログでずいぶん調べてきました。
なんでリスクがあると複利にならないのか、実はrennyさんの「コツコツと〜く #5」でそのたとえ話を少し話したので、それをこのブログでも書こうと思います。
ある金融商品を思い浮かべましょう。期待リターンは0%、ただし2分の1の確率で値段が10%上がったり10%下がったりする、という価格変動のリスクがあります。
これを長期で保有したらどうなるでしょうか? 期待リターンが0%だから、値段が上がったり下がったりしながら、0%付近をうろうろするんだろうと思いますよね?
でも違うんです。計算してみましょう。
この金融商品を100万円分買ったとします。2分の1の確率で上がったり下がったりするので、1年目は10%値上がりして、2年目は10%値下がりして、3年目は10%値上がりして、と交互に値段が上がったり下がったりしたとします。
1年目 10%上がって110万円
2年目 10%下がって99万円
3年目 10%上がって108.9万円
4年目 10%下がって98.01万円
5年目 10%上がって107.81万円
6年目 10%下がって97.03万円
7年目 10%上がって106.73万円
8年目 10%下がって96.06万円
9年目 10%上がって105.67万円
10年目 10%下がって95.1万円
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この値動きをグラフにしてみましょう。
期待リターン0%なのにだんだん下がってますよね。なぜ下がるのか? それは、値段が10%上がって10%下がっても、元の値段には戻らないからです。100万円が10%上がって10%下がると、99万円になっちゃうんですよ。で、も一回上がって下がると98万円くらいになっちゃう。
だから、上がって下がってを繰り返すだけで値段がどんどん下がるのです。
これ、リスクが大きいほど下がり方が大きくなります。25%上がって25%下がるほどリスクが大きくなると、どうでしょうか。グラフを見てみましょう。
リスクを大きくとればとるほど、それだけで長期保有すると結果が悪くなるのです。大きい期待リターンを狙うためにリスクも大きくとっても、こんな風に下落する確率も大きくなるのです。だから単純に期待リターンの複利で考えちゃだめだし、複利にならないんです。
リターンを大きくすることだけを考えるのではなくて、リスクを小さくすることもすごく大事なんだよ、というお話でした。
(追記 7/17 :コメントでも指摘されていますが、この計算は実際には単純化したものです。対数を使ったり確率分布を使って計算したグラフは、僕の作ったツール「アセットアロケーション分析」の「投資結果の予想」グラフでみることができます)
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収益を確実に得ようと思えば、期待リターンよりリスクを低くしなければなりません。
年金運用で見てみると
http://www.smrj.go.jp/skyosai/dbps_data/_material_/common/chushou/d_skyosai/pdf/jyoukyou20100816.pdf
>期待収益率2.09%、標準偏差1.69%
http://www.kkr.or.jp/shikin/report220308.pdf
>期待リタ-ン1.6%、期待リスク1.8%
財投債を入れれば、リスク0のプラスリターンが見込めるようです・・
個人では買えないので、ネット定期や個人国債がこれに該当します。
元本保証物でフルヘッジ(金利分で負債をカバー)しておかないと、確率論的には損をする割合が多くなります。
結果として、リスク資産の比率を最適化しようとすれば、期待リターンは長期国債に少しのプレミアくらいが妥当かもしれません・・
個人的にこの手の問題では、期待リターンからの乖離が絶対値で同じという前提はどこまで実用的か、と思います。
個別株だと、1年で+数百%となる株はありますが、-数百%となる株はなく、プラス幅とマイナス幅が同じという前提が気になります。
対数で考えろ
n倍に上がるの反対は1/n倍に下がる、だ
吊られた男さん、mさん、こんにちは。
ご指摘の通り、ここで紹介したのは簡略化した計算なんですよね。対数化して確率分布にした計算は以前僕が作ったこのツールで計算してグラフでみれます↓
http://guide.fund-no-umi.com/tools/aa.html
というわけで、やっぱり次回は簡略化じゃなくてちゃんと計算することにしますかねー。もうかなり忘れちゃってるんだけど。
(結果は似たようなものかなあ…)
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